継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 そもそも、ヴィンセント様のお母様の故郷だから、ご報告に行かなければならないというのも、仕方のないことよね。

「……分かりました」
「うん。ヴェルヘルミーナは、物分かりが良い子だ」

 そう言ったヴィンセント様は朗らかな笑みを浮かべ、私の頭をそっと撫でた。

 何だか、これって子どもを褒める大人みたいだわ。

 ヴィンセント様は、私を子ども扱いされているのかしら。もしかしたら彼の中で私は、幼かった頃のままなのかもしれない。
 ふとそんなことを思うと、なんだか心の奥がもやもやとし始めた。

 ◇
 
 翌朝のこと。
 アーリックまでは何日かかるのだろうかと、不安に思いながら朝食を終えて旅支度をしていると、ヴィンセント様が迎えに来てくださった。

「滞在は一晩だ。荷物は最小限で良いだろう」
「何を言っているのですか、ヴィンセント。お洒落(しゃれ)は淑女の(たしな)みですわよ」

 ローゼマリア様は少し唇を尖らせ、子どもっぽい不満顔をヴィンセント様に向けている。本当に遠慮がなく、仲のいい親子なのが伝わってくる。