継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 ヴィンセント様のお願いを聞こえなかったことにした。

 ひとまず、これで継母を追い出すための協力者を得られたわ。セドリック、お姉ちゃん、もっと頑張るわね。
 愛しのセドリックの笑顔を思い出し、心を落ち着けようと試みる。だけど、それをすぐにヴィンセント様の声が邪魔をした。

「ヴェルヘルミーナ? 聞こえているかい?」
 
 これは政略結婚よ。
 私は、セドリックのために結婚をするの。それが私の幸せであって──

 空を見上げて考えていた私の視界に、ヴィンセント様の綺麗なお顔がぬっと入り込んだ。

「相変わらず、ヴェルヘルミーナは照屋なようだね」
 
 ぼんやりとしか思い出せないヴィンスの笑顔が、彼に重なった。

 体温が一気に上がり、頭が熱くなっていく。
 何をどうお返事するのが正解なのか、全く分からず、ついに私の脳は考えるのを放棄した。

 視界がすっと昏くなった。
 私の名を呼ぶヴィンセント様の声と、ダリアの声が重なった。だけど、それに「心配しないで」と返すことすら出来ずに、私は意識を手放していた。