サソリは聖女見習いの激愛に猛毒を刺す【一話だけ】

もし、ネリウス王子がセリアの身を脅かすまで絶望的な男だったならば、いくらでも刺してみせよう。

好きな人と結ばれてほしい。

誰かはわからなくても、セリアが想いを寄せているならば間違いないはず。

仮に結論がヒュアデス王国のネリウス王子に嫁ぐとなっても、ネリウス王子がセリアを傷つけたらその時は――。

「すでに見てわかったと思うが、王子はああいうお方だ。セリア姫が嫁いだところで変わらないだろう」

「そうですね。まさかあそこまで女たらしとは……」


頭が痛い。

悪評とはありのまま、素直にプレアデス国まで届いていたようだ。

こうなればプレアデス王が婚約を取りやめたいと望むくらいにネリウス王子の評判をまとめ、匿名で送りつけてやる。

セリアが苦しむことなく、好きな人のもとへ嫁げるように。

プレアデス国の宝であるセリアを守るために、メメリアはこの手を汚す。

「あのような方にあたしのセリア様は渡せません! ……とはいえ、事は荒立てたくないのです。ネリウス王子の実態をプレアデス王に報告する。それだけですのでお見逃しくださいませんか?」

そうでなくては、一番にリヴィアンを手にかけなくてはならないから……。

そんなのは嫌だ!

こんな国宝級の美しさを本当に赤く染めるなんて!!

セリアが涙に暮れるように、メメリアは嘆いて立ち直れなくなる。

なぜ、よりにもよってリヴィアンのような美男子が屑のネリウス王子の側近なんだ!!

(……側近? それだけ?)

側近ならばなぜ、メメリアのいる部屋に来た?

あの場所は二階。
普通の人が軽々と窓を越えてやって来れる場所ではない。

リヴィアンがメメリアを疑ったように、リヴィアンだって十分おかしいのではないか?