移動した先は水晶宮を出て庭園の噴水を越えたところに立地する屋内庭園だった。

植物に囲まれたガラスの建物に入ると、リヴィアンは硝子ランプに明かりを灯して夜を照らしだす。

「それで、お前なんだ?」

足を止めてリヴィアンがメメリアに振り返る。

真っ赤な瞳にメメリアが映るだけで、喜びの舞いを踊れそうだと心の中でキャーキャー言いながら笑顔を取り繕った。

「あたしは新しく入った侍女のメメ……」

「主は誰だ? 侍女以外で答えろ」

「…………」


あーぁ、早くも見つかってしまった。

国に追い返されるだろうか。セリアに迷惑をかけるだろうか。

いずれにせよ、スタートもしないうちにゲームオーバーとは情けない。

涙目に天を仰ぐと、やけくそになって胸に手をあてて顎を引いた。

「プレアデス国、第一王女・セリア様にお仕えしています。聖女見習いのメメリアです」

「……聖女見習い?」

プレアデス国は精霊の力を借りて建国したと言われている。

女神を主神とし、精霊崇拝をする国で、その取次をする役割を担うのが”聖女”と呼ばれる存在だ。

セリアは王女として生まれながら、聖女としての素質を持ち、今では国の聖女として最高位に座していた。

セリアを聖女のトップに、素質のあるものが聖女見習いとして聖堂勤めとなる。

メメリアは聖女見習いとしてセリアの庇護下にある。

だがそれだけではない。メメリアはセリアを守るため、忠実なしもべとして暗躍する者となっていた。

それをセリアは知らない……。