「和平のためとはいえ、聖女様をあの悪評高い王子のもとへ嫁がせるなんてありえません! あたしがウワサの真相を確かめてまいります!」

精霊の住まう森を挟んで並ぶ王国があった。

大陸の西に位置するのは”プレアデス国”。

精霊の声を聞くとされる王族を中心に、多くの宝石が取れる鉱山大国だ。

東に位置するは”ヒュアデス王国”。

美しいエメラルドグリーンの海をはじめとした豊かな水源地国である。

同じ大陸で、姉妹国として友好を深めていた両国だが、更なる発展を願いついに婚姻関係を結ぶことに。

東のヒュアデスからは第一王子・ネリウスが。

西のプレアデスからは第一王女であり、聖女と名高いセリアが選ばれた。


めでたい話に両国の民は大喜び。

しかしプレアデスの王女・セリアは浮かない様子。

そしてセリアを最も近くで心配するのは、聖女見習いのメメリア。

ことの発端はセリアが嫁ぐことを嫌がり、私室に閉じこもってしまったことだった。

メメリアは辛く悲しむセリアに心を痛め、なんとかセリアを傷つけない方法はないかと考えていた。


「セリア様。あまり悲観しないで大丈夫ですよ。ウワサなんてあてになりませんから」

「嫌よ! あなたも知っているでしょう!? ネリウス王子の悪評を!」

断固拒否と示すセリアに、メメリアは眉間をつまんで悩ましげに唸りだす。

セリアがそれほど嫌がるのも無理のない話であった。

なにせネリウス王子には”とんでもない悪評”がいくつもくっついているのだから。