『それは……』

『ほら見ろ。それに、さっき月姫泣くの我慢してだぞ。自分の気持ちを押し殺して編入することを了承した。……少しくらい月姫の気持ちを聞いたらどうなんだ』

そう。月姫はいつも周り優先で自分の気持ちを昔から押し殺して生きていた。月姫が本当の事を言ったことなんて、指で数えられるくらいだと思う。なんで本心を隠しているのかはわからない、というか誰にもバレないように隠している。それもかなり厳重に。そうしてまで俺たちに知られたくないのか……はたまた俺たちに心配をかけたくないからなのか。それは月姫以外誰にもわからない。

『聖夜。』

『……なんだ』

今まで黙っていた母親が口を開いた

『あなたが、月姫のことをすごく大切にしているのは知ってるわ。でも、今回は仕方ないでしょう。たしかに……海外赴任の話が出てすぐに言わなかったのは悪いと思ってるわ。それに、私達もたくさん考えて、悩んだの。私はお父さんについて行くけど、聖夜は寮だからここに残るのは月姫だけになる。月姫は可愛いし、大切な娘だから大切な娘をこの家に1人だけ残すのは私も嫌よ。だから私もここに残ろうと思ってお父さんに“ 月姫だけをここに残すのなら私もここに残る”って言ったの』