体育祭から数日経った放課後。さゆかが体育館近くを通ると、ドリブルの激しい音がした。
(あ、バスケ部練習してる。来月練習試合って言ってたっけ)
少し離れたところから眺めていた。
「見学?」
ビクッ
練習着姿の矢田が後ろに立っていた。
「あ、ごめん。覗き見されたら気が散るよね」
「全然。試合近いと外野が気にならないくらいみんな集中するから」
「そうなんだ…。じゃあ私帰るね、お疲れ様」
「試合、見に来ない?」
「え?」
「あ、いや、その…菅の普段とちがう姿を見てほしいと思って」
(この人、どんだけ菅推しなんだろ)
「あー、菅の勇姿をね。麻由とか誘ってみるよ」
「ありがとう。じゃ」
『来週の土曜日、急きょ休みになったんだけど暇だったりする?』
『すみません、その日は予定があって』
(せっかく向こうから誘われたのに、辛い。会いたかったなぁ。今月は平日も体育祭の打ち上げや友達との予定続きで会えないし、すれ違いだなぁ)
練習試合前日。
「店長」
休憩中の一優に駒井が話しかける。
「ん?」
「明日お休みですよね?夜、暇だったりします?」
「暇だよ」
「俺、早番なんで飲み行きません?」
「うん、いいよ」
次の日。練習試合は、相手校の体育館で行われた。2階の見学席からコートを見るさゆかと麻由。最初のスタメンは3年生5人。菅と矢田はベンチにいた。試合が始まり、さゆかと麻由は必死に応援をしていた。
試合途中、選手交代で菅と矢田が3年と代わり、コートの中に立った。矢田がボールとともに勢いよく走り、菅にパスをした。菅はそのまま相手のディフェンスを見事にくぐり抜けシュートを決めた。
(え、あれが菅?別人じゃん。あんな鋭い矢田くんも初めて見た。2人ともかっこよ!!」
菅と矢田の活躍に目が離せないさゆかと麻由。
試合後。
「しらっちー!水沢ー!」
「お疲れー!びっくりしたよ。菅があんなにすごいなんて」
「だろー?もしかして、惚れた?」
「ごめん、それはないけど。でもほんとかっこよかった!ね、麻由?」
「…」
「麻由?」
「あ、うん、すごかった」
「矢田くんは?」
「あそこ」
視線の先には女子に囲まれる矢田がいた。
「おかしいよな…俺も同じくらい活躍したんだけどな」
いじける菅。
「仕方ないよ、あの子達はそもそも矢田くんしか見てないからさ。出てない時と出た時の応援の差がやばかったもん」
「あ、そうだ。この後打ち上げあるんだけど、お前らも来る?」
「いやいや、部外者が行っても気まずいわ」
「呼ぶなら矢田くんの取巻きを誘いなよ」
「実は、前に誘ったことがあって…。参加したものの、結局打ち上げの間ずーっと矢田にしか絡まなくて、先輩たちの逆鱗に触れて会には出禁なんだ」
(なんだそれ)
夜、駒井が滝の元へ駆け寄る。
「店長!お待たせしました!」
「お疲れー。トラブルとかなかった?」
「はい!特に何もなくいけてます」
「よかった」
店に向かって歩く2人。
「あれ。あそこにいるのって、店長の妹ちゃんじゃないですか?」
駒井が指差す先には、バスケ部と歩くさゆかたちがいた。
「部活終わりとかですかね?なんか、青春って感じでいいっすね。あ、妹ちゃん話しかけられてる。彼氏かな?」
「…」
矢田に話しかけられるさゆかを無言で見る一優。
「じゃあ、行きましょうか」
「…うん」
打ち上げに向かいながら、集団の後ろでさゆかと矢田が話している。
「今日は来てくれてありがとう。応援もすごく嬉しかった」
「ううん。良い試合見せてもらって、むしろこっちがありがとうだよ!菅の新たな一面も知れたし、矢田くんの努力の成果を見れて大満足!」
笑顔で話すさゆかに頬を赤くする矢田。
店内、遠慮がちに隅の席に座るさゆかと麻由。さゆかの前には矢田、麻由の前には菅が座っている。菅の横に座っている先輩が話しかけてきた。
「2人とも、今日はわざわざありがとね!いつも矢田のファンばっかでさ…2人が俺らのこと一生懸命応援してくれて、まじ泣きそうだったわ」
「とんでもないです。見応えのある試合で感動しました」
「先輩のラストのシュート最高でしたよ!」
「うぅっ、何この子達!良い子すぎるぅー!すがぁー、俺この子達と付き合う〜」
「なに言ってんすか!コーラで酔うのやめてくださいよー」
(菅がツッコミ役なの珍しいな)
「良い子で可愛いんだから彼氏いるだろ」
他の先輩が冷静に言う。
「いませんよ、私たち」
麻由の言葉に矢田が静かに反応する。
解散後。
「あのさっ…」矢田がさゆかに声を掛ける。
「ん?」
「さっき彼氏いないって言ってたけど…好きな人いたりする?」
(好きな人…)
一優の顔が頭に浮かぶ。
(ううん、滝さんは推しだもん。そう、好きじゃない)
「いないよ」
「…なら、来月の花火大会一緒に行かない?」
「え…」
月曜日、さゆかは授業を受けながら考えていた。
(矢田くんに花火大会誘われてOKしたけど、急展開過ぎて頭が追いつかない。花火大会かぁ…滝さんは仕事なのかな)
(あ、バスケ部練習してる。来月練習試合って言ってたっけ)
少し離れたところから眺めていた。
「見学?」
ビクッ
練習着姿の矢田が後ろに立っていた。
「あ、ごめん。覗き見されたら気が散るよね」
「全然。試合近いと外野が気にならないくらいみんな集中するから」
「そうなんだ…。じゃあ私帰るね、お疲れ様」
「試合、見に来ない?」
「え?」
「あ、いや、その…菅の普段とちがう姿を見てほしいと思って」
(この人、どんだけ菅推しなんだろ)
「あー、菅の勇姿をね。麻由とか誘ってみるよ」
「ありがとう。じゃ」
『来週の土曜日、急きょ休みになったんだけど暇だったりする?』
『すみません、その日は予定があって』
(せっかく向こうから誘われたのに、辛い。会いたかったなぁ。今月は平日も体育祭の打ち上げや友達との予定続きで会えないし、すれ違いだなぁ)
練習試合前日。
「店長」
休憩中の一優に駒井が話しかける。
「ん?」
「明日お休みですよね?夜、暇だったりします?」
「暇だよ」
「俺、早番なんで飲み行きません?」
「うん、いいよ」
次の日。練習試合は、相手校の体育館で行われた。2階の見学席からコートを見るさゆかと麻由。最初のスタメンは3年生5人。菅と矢田はベンチにいた。試合が始まり、さゆかと麻由は必死に応援をしていた。
試合途中、選手交代で菅と矢田が3年と代わり、コートの中に立った。矢田がボールとともに勢いよく走り、菅にパスをした。菅はそのまま相手のディフェンスを見事にくぐり抜けシュートを決めた。
(え、あれが菅?別人じゃん。あんな鋭い矢田くんも初めて見た。2人ともかっこよ!!」
菅と矢田の活躍に目が離せないさゆかと麻由。
試合後。
「しらっちー!水沢ー!」
「お疲れー!びっくりしたよ。菅があんなにすごいなんて」
「だろー?もしかして、惚れた?」
「ごめん、それはないけど。でもほんとかっこよかった!ね、麻由?」
「…」
「麻由?」
「あ、うん、すごかった」
「矢田くんは?」
「あそこ」
視線の先には女子に囲まれる矢田がいた。
「おかしいよな…俺も同じくらい活躍したんだけどな」
いじける菅。
「仕方ないよ、あの子達はそもそも矢田くんしか見てないからさ。出てない時と出た時の応援の差がやばかったもん」
「あ、そうだ。この後打ち上げあるんだけど、お前らも来る?」
「いやいや、部外者が行っても気まずいわ」
「呼ぶなら矢田くんの取巻きを誘いなよ」
「実は、前に誘ったことがあって…。参加したものの、結局打ち上げの間ずーっと矢田にしか絡まなくて、先輩たちの逆鱗に触れて会には出禁なんだ」
(なんだそれ)
夜、駒井が滝の元へ駆け寄る。
「店長!お待たせしました!」
「お疲れー。トラブルとかなかった?」
「はい!特に何もなくいけてます」
「よかった」
店に向かって歩く2人。
「あれ。あそこにいるのって、店長の妹ちゃんじゃないですか?」
駒井が指差す先には、バスケ部と歩くさゆかたちがいた。
「部活終わりとかですかね?なんか、青春って感じでいいっすね。あ、妹ちゃん話しかけられてる。彼氏かな?」
「…」
矢田に話しかけられるさゆかを無言で見る一優。
「じゃあ、行きましょうか」
「…うん」
打ち上げに向かいながら、集団の後ろでさゆかと矢田が話している。
「今日は来てくれてありがとう。応援もすごく嬉しかった」
「ううん。良い試合見せてもらって、むしろこっちがありがとうだよ!菅の新たな一面も知れたし、矢田くんの努力の成果を見れて大満足!」
笑顔で話すさゆかに頬を赤くする矢田。
店内、遠慮がちに隅の席に座るさゆかと麻由。さゆかの前には矢田、麻由の前には菅が座っている。菅の横に座っている先輩が話しかけてきた。
「2人とも、今日はわざわざありがとね!いつも矢田のファンばっかでさ…2人が俺らのこと一生懸命応援してくれて、まじ泣きそうだったわ」
「とんでもないです。見応えのある試合で感動しました」
「先輩のラストのシュート最高でしたよ!」
「うぅっ、何この子達!良い子すぎるぅー!すがぁー、俺この子達と付き合う〜」
「なに言ってんすか!コーラで酔うのやめてくださいよー」
(菅がツッコミ役なの珍しいな)
「良い子で可愛いんだから彼氏いるだろ」
他の先輩が冷静に言う。
「いませんよ、私たち」
麻由の言葉に矢田が静かに反応する。
解散後。
「あのさっ…」矢田がさゆかに声を掛ける。
「ん?」
「さっき彼氏いないって言ってたけど…好きな人いたりする?」
(好きな人…)
一優の顔が頭に浮かぶ。
(ううん、滝さんは推しだもん。そう、好きじゃない)
「いないよ」
「…なら、来月の花火大会一緒に行かない?」
「え…」
月曜日、さゆかは授業を受けながら考えていた。
(矢田くんに花火大会誘われてOKしたけど、急展開過ぎて頭が追いつかない。花火大会かぁ…滝さんは仕事なのかな)



