影幻と陽光

「だから俺は、わざと距離を取ってる。でも……本当は、近づきたいんだ」

その言葉に、思わず胸が締めつけられた。

――近づきたい? 私に?

でも同時に、頭の中で警鐘が鳴る。

だめ。信じちゃだめ。

だって彼は神龍組の若頭で、私は古蔵組の娘。

絶対に、相容れない立場。

「……そんなこと、言われても」

声が震える。自分でも驚くくらい、弱い声だった。

蓮舞は真っすぐ私を見ている。

その瞳に映る自分から、逃げたくなる。

「私は……普通に学校に来て、普通に過ごせれば、それでいいの」

そう口にしながら、心の奥では気づいていた。

――本当は、彼の言葉を嬉しいと思っている自分に。

「ごめん、もう行くね」

私は蓮舞の横を通り過ぎ、教室へ足を踏み入れた。

背中に彼の視線を感じる。

その熱さが、ずっと消えなくて――胸の奥をざわつかせ続けた。