ちらりと横を見れば、まだ井上はいる。

 どこに向かうでもなく、ただ脚を動かした。

「はぁー。顔に傷があるから、相川さんと会わないんですか?」

「ちげぇよ」

 顔に傷があったって大して気にすることじゃねぇ。

 ホントのこと言うと、舞希に拒否られた時は、心臓が止まるんじゃねぇかってほど驚いたし、傷ついた。

 でも、舞希は意識不明から回復したばっかだったから、何かしら理由があると踏んでいたんだ。

 だから次の日、病室に行こうと思ってたのに。

「………傷が出来た原因、ですか?」

「そんなとこだ」

「アライ、ですか?」

「ーっ?!てめぇ、知ってるのか?」

「当り、ですか……」

「井上、てめぇは何を知ってる」

 キツく睨んだつもりなのに、コイツは怯まない。

 怯むどころか、ふんっと鼻で笑ってみせた。