◆……

「………き………舞希…?」

「……ん………」

 気づけばベッドで寝ていたところを朔兄に起こされた。

「ほら、飯だぞ」

「あ、うん。……あれ…?」

 ベッド………?

 あたし……ベッドの横で寝てたんだよね?

「朔兄……。あたしを、ベッドに運んでくれた?」

「…あぁ、それなら啓輔が運んでくれたんだと思うよ?」

 岩佐先輩が……?

 なんで………?

「……そう……なんだ…。
後でお礼言わなくちゃだね……」

「俺、先食ってるからさ」

「あ、うん」

 朔兄が部屋を出ていった後、机に目をやれば岩佐先輩に貸したはずのマフラーが置いてある。

「……ん?」

 マフラーを手に取ると、一枚のメモがヒラヒラと舞い床に落ちた。

 そのメモに目を通すと

『ベッドの横で寝てんじゃねぇよ!!
風邪ひくだろ!
ベッドがあるんだからベッドで寝ろ!!

それと、マフラーありがとな
一応、洗っといたから!』

「……ふふ」

 岩佐先輩が、運んでくれたんだ……。

 なんか、嬉しいな……。

 朔兄に頼まれたからだけど、守るために送り迎えしてくれた隠れた優しさも、こういった何気ない優しさも。

 全部ひっくるめて先輩のこと……


「………………好き」

 あたしは、思わず声に出していた。

 きっと今顔赤いんだろうな……。

 いつか……。

 同じ気持ちになれる日が来たら良いな。