凪が最後のシフトの日。



「凪、お疲れ様ー!」


「今までありがとうね!これ、よかったら!」


ラストの閉店作業を終えた店内。


いつもより少しざわついていて、
バイトメンバーたちが凪にお菓子や小さなプレゼントを手渡している。



「……別に、用意しなくてよかったのに。」



そう言いつつも、凪はどこか照れたような顔で、
「ありがとう」と言いながら、差し出された袋をきちんと両手で受け取った。


(ああ……やっぱり今日が、本当に最後なんだ)


笑い声が飛び交う中で、私はずっと胸の奥がぎゅっと締めつけられていた。



静かに、でも確実に。


終わりを告げる音が、夜に溶けていく。



「藤宮さん、駅?」


「……あっ、うん!」


「そっか。じゃあ、行こ」


バイト終わりに何度も交わしたこの何気ない会話。
でも、それすらも今日で最後だと思うと、喉の奥が詰まった。


店を離れて、いつもの人通りの少ない帰り道を歩く。


なんでもない風景が、やけにまぶしくて、ぼやけて見えた。


(……もう、この道を一緒に歩くことは、ないかもしれない)