千紗との会話を終えて帰宅した梓は、ふとスマホを取り出した。


画面に映るのは、先日遊園地で凪と一緒に撮ったツーショット。


凪は普段通り、無表情に近いけれど、どこか柔らかさを帯びた表情をしている。
それに対して、自分はぎこちなく笑っていて、照れも隠せていなかった。



その写真を見つめながら、梓の胸にじんわりと温かい感情が広がる。


(嬉しかったな。これ撮ってもらえた時)


(振られたら、どうしよう。怖い…。でも……このまま何も言わずに終わる方が、ずっと怖い)


(だから──ちゃんと、自分で言うんだ)




怖さや不安は消えないけれど、写真の中の彼の表情を見て、決意が少しずつ固まっていった。



静かな夜の部屋で、梓はそっとスマホをしまった。
その小さな決意が、確かに胸の奥で灯った瞬間だった。