毒舌男子の愛は甘い。



「すみません。この子、俺の彼女なんで」



言葉はシンプルだけど、その一言に重みがあった。


(えっ…?)


心臓が一気に脈打つ。
驚いて、思わず凪の顔を見上げた。



男は気まずそうに視線を逸らし、そそくさと去っていく。


凪は少し照れたように笑いながら、


「ごめん、咄嗟にああ言ったほうが丸くおさまると思って。」


私は少し胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じて、


「ううん、ありがとう。助けてくれて……」



声が震えて、目の奥が熱くなった。


凪の優しい目を見つめると、心の奥で何かが溢れそうで、どうしても言葉にできなかった。


助けてくれるための嘘ってわかってるのに、
凪の口から"俺の彼女"って言葉を聞いた瞬間、
どうしようもない嬉しさが込み上げてしまった。


(どうしよう…。やっぱり、この人と、離れたくない。まだまだ、ずっとそばにいたい)



その思いが胸を締めつけて、でも同時に小さな勇気にもなった。