遊園地に行った日から、悠人くんとはバイト中でも自然に話せるようになった。



業務連絡の合間に、お客さんがいないタイミングで、ちょっとした冗談や笑いも増えていく。



「梓ちゃん、さっきのラテのハート、めっちゃ歪んでたな」



悠人がにやっと笑う。



「え、そう?ちゃんとハートだったよ?」


「いやいや、あれは新しいアートのジャンルだわ。題して、“ひねくれハート”」


「えっ、ひどい!」



笑いながら、トレーを受け取って席へ運ぶ。



軽口を叩き合う空気は、どこか兄妹みたいで気楽だ。



けれど、そのやりとりの横で──


カウンターの奥、凪は黙々とグラスを拭いていた。



目が合えば必要な業務連絡はしてくれるけど、表情も声の温度も、少しだけ遠い。


(……水野くん、なんか、よそよそしい…?)



理由がわからなくて、胸の奥が小さくざわついた。