気づけば、空はすっかり暗くなっていた。


観覧車から降りて、再び地上に戻ってきたはずなのに、まだふわふわしてる。


目の前で笑ってる悠人くん。


ちょっと後ろで歩いてる葉月さんと水野くんの気配。
でも、なんとなくわかる。


(水野くん、少し元気がない?)


(やっぱり遊園地、疲れちゃったのかな)



チラッと後ろをそっと見る。
夕暮れに溶けかけてる横顔。静かで、穏やかで……でも、なにか考えごとしてるように見えた。



──その顔が、少しだけ遠く感じて、胸の奥がチクリと痛んだ。



「ね! 最後に記念写真とろーよ!」



元気な葉月さんの声に、空気がぱっと明るくなる。


「おっけー!」


「……あっ、はい!」


私も遅れて返事をして、門の前に移動する。


大きな遊園地のロゴオブジェの前で、悠人くんがスマホを構える。



「せーの、はいチーズ!」


カシャッ。


「もう一枚いくよー、はいチーズ!」



何度かシャッター音が鳴るたび、背中のどこかがムズムズする。背中に感じる凪の気配。



(……さっきからずっと、水野くんの存在が気になる)


「おっけー! ばっちり!」


悠人がにこっと笑ってスマホを下ろす。


(……ああ、終わっちゃう)



帰る空気に、急に寂しさが込み上げてくる。


名残惜しくて、どうしようもなくて、でもこのまま何もできないのは──もっと嫌だった。


だから、勇気を出して、声をかけた。