「ねえ、ちょっと聞くけどさ」


「うん?」


「梓ちゃん、凪のこと、好きでしょ?」


その名前が突然出てきて、私は思わず体を強ばらせた。


「そ、そんなこと……」


「わかりやすすぎるよ、梓ちゃん」



悠人くんはにこっと笑ったけど、その瞳には少しだけ真剣な光が宿っていた。



「最初はちょっといいなって思ってたんだよ。梓ちゃんのこと」


「え……」


「でも途中から気づいたんだ。君の目線、ずっと凪の方ばかりだって」


「……ごめん」


「謝んないで〜。誰も悪くないから」




悠人くんは少し目を細めて空を見上げる。



「凪は不器用だけど、ちゃんと見てると思うよ。梓ちゃんのこと大事に思ってるはず」


「……え、そ、そうかな……?」


「うん。まあ、ちょっとは妬けるけどね。俺だって男だし」




冗談めかして笑いながら、悠人くんはそっと窓の外を指さした。



「ほら、あれ。凪、こっちのゴンドラ見てたよ。わかりやすいなーって思ってたんだ」


慌ててその方向を見るけれど、凪の顔はすでに見えなかった。