「じゃあ観覧車、ペアで乗ろ〜!」
悠人くんのその一言に、私の心臓が跳ねた。
(ぺ、ペア……!?)
「えー、どうやって決めるの?」
「シンプルに、近くにいる人とでいいんじゃない?」
そう言いながら、悠人くんはぱっと私の手を取った。
「じゃあ梓ちゃん、一緒に行こう!」
「えっ?あ、うん……!」
(わ、私、反射的に頷いちゃった……)
横を見ると、凪がほんの一瞬だけ目を細めているのが見えた。
でもすぐに視線を逸らし、葉月さんの方へ黙って歩いていく。
(……水野くんと乗りたかったな…)
だけど、そんなこと言える距離じゃない。
名前すら呼べない私が、何を望んでいるんだろう。
そんなことを考えながら、悠人くんと並んでゴンドラに乗り込む。
扉が閉まり、ゆっくりと動き出す箱の中。 視界が少しずつ高くなっていく。
「わあ、結構高いね。梓ちゃん、高いところ平気?」
「うん、こういうのは大丈夫。……さっきのお化け屋敷より全然」
「確かに!梓ちゃん、あの時の絶叫すごかったもんね!」
「……や、忘れてよ!」
ふたりで笑い合ううちに、空気が少しずつ和らいでいった。
(悠人くんって、本当に明るくて優しいな……)
いつの間にか敬語も抜けてて、何気ない会話だけど、心がほぐれていくようで、沈んでいた気持ちが少し軽くなった。

