毒舌男子の愛は甘い。



そしてその姿に──通り過ぎる男たちの何人かが、明らかに振り返った。




2人組の大学生っぽいやつ、


親子連れの父親、


同年代の男──




どいつもこいつも、目線が、梓に釘付けだった。



(……見るな)



そんなこと思ったって仕方ないのに、自然と視線で追い払いたくなる。



(……やばい、無理。心臓いてぇ)



それでも、無理やり口を開いて、いつものように声をかける。



「……藤宮さん?」



彼女がはっと振り返って目が合った。



その瞬間、言葉を完全に失った。



あまりに似合っていて、あまりに綺麗で。


なのに目が合ったとたん、少し不安そうに目を伏せた彼女が、たまらなく可愛かった。


「えっと……変かな……?」



控えめにそう言ったその瞬間──



「はあぁぁ!?梓ちゃん!?ちょっとなにその可愛さ!?やばない!?」



佐久間の爆音が背後から飛び込んできて、我に返った。


「脚!細い!白い!っていうかコーデ最高すぎ!!顔も仕上がってるし可愛さ爆発してるんだけど!?」



「ちょっと、悠人くん落ち着きなって!気持ちわかるけど、うるさい!」


三浦さんのツッコミに、佐久間が更に盛り上がるのを聞きながら──


やっと目を逸らして、どうにか喉の奥から押し出した。



「……似合ってる。……その服」


そうしか言えなかった。



ほんとは、“可愛すぎる”って言いたかった。


でもそんなの言ったら、俺、絶対終わる。