集合時間の15分前。
駅前の待ち合わせ場所に早めに着いた俺は、壁にもたれかかりながら、スマホを意味もなくいじっていた。
(……ほんと、なんで来るって言っちゃったんだ)
遊園地。
正直、そういう“わちゃわちゃした場所”は苦手だ。
それでも即答で「行く」って返したのは──あの一言のせい。
「ちなみに、梓ちゃんも来まーす!」
その文面を見た瞬間、ためらいとか全部吹っ飛んだ。
(……来るなら、会いたいって思ってしまった)
そんなこと、口が裂けても言えないけど。
ふと、改札のほうに目を向ける。
——その瞬間、視線が止まった。
風になびくゆるっとした巻き髪。
透け感のあるブラウスと、黒のショートパンツ。
脚が長くて、細くて、光に当たって眩しく見える。
それに、小さな顔にナチュラルなのに洗練されたメイク。
(……誰、って思った。一瞬)
違う。違わない。
ちゃんと藤宮さんなんだけど……“今日の藤宮梓”は、見慣れてる彼女じゃなかった。
(まじで、可愛すぎる。)
思考が完全に止まった。
やべぇ、声が出ない。

