毒舌男子の愛は甘い。




改札を出て、遊園地のゲートが見えてきた瞬間。


胸の鼓動が、どん、と跳ねた。


(だ、大丈夫かな……浮いてない?やりすぎだったかも……)


千紗が全力でプロデュースしてくれた、今日のコーディネート。


鏡で見たときはちょっと背伸びした自分に驚いたけど、


時間が経つにつれて、不安のほうが大きくなってきた。



(……でも、水野くんに“可愛い”って思ってもらいたくて、頑張ったんだもん)



自分の背中をそっと押すように、心の中で言い聞かせる。



待ち合わせの場所が近づくほどに、足取りは自然とゆっくりになった。



──そのとき。


「……藤宮さん?」



聞き慣れた、低くて静かな声が背後から届いた。



(っ……来た)



振り返ると、そこには水野凪が立っていた。



白のTシャツに黒のシャツをさらっと羽織り、細身のパンツを合わせたシンプルな私服。


それだけなのに、なんでこんなに様になるんだろう。


(……かっこよすぎる)


そう思った瞬間、水野くんの視線がまっすぐこっちに向けられているのに気づいた。