毒舌男子の愛は甘い。




──正直、かなり勇気がいるけど。



鏡の中の自分を見て、ほんの少しだけ、心が揺れた。


ハイウエストのパンツが脚をすらっと見せてくれるし、ブラウスの透け感が肌をやわらかく見せてくれる。


(……あ、思ったより悪くないかも)


カーテンを開けると、千紗が目を輝かせてうなずいた。



「はい、優勝。もうこれで決まり!」


「優勝って……」


「これ見てスルーする男子いたら、その人は人間じゃないから! むしろ水野くん、梓が可愛すぎて何も言えなくなってモジモジする未来が見えたわ」


「や、やめてよ……! 想像したら恥ずかしくて着れなくなる!」


「それでいいの。恋はね、攻めてナンボ!」



千紗の強気な笑顔に押されて、私はもう一度、鏡に映る自分を見た。



普段の私より、少しだけ背伸びした服。
だけど、なんだろう。


この服を着てると、ほんの少しだけ、自分に自信が持てる気がする。



「……じゃあ、これにしよっかな」

「よしっ、小物も選ぶよー。任せといて!」

「……ありがとう、千紗」

「ふふん、友達だからね」



そう言って笑う千紗の隣で、私はそっと胸に手を当てる。



(……水野くん、可愛いって思ってくれるかな)



そう思っただけで、胸の奥が、ふわっとあたたかくなった。