今日は、バイトも講義もない日。
外は晴れてるのに、カーテンは半分閉じたまま。
凪は、適当に音楽を流し、スマホいじって、だらっと過ごしていた。
そんなときに、
ピロンと通知が鳴った。
──佐久間 悠人
(珍しいな)
「おつかれ〜!!次の祝日、バイトメンバーで遊園地行こうってなってるんだけど、凪もどう?」
……遊園地?
(……いや、無理)
人混み、絶叫系、写真タイム、集団行動。
どれも得意じゃない。
むしろ地獄だ。
無意識に打ちかけた文字列は、
「無理」
その「り」に指をかけた瞬間——もうひとつ、通知が飛んできた。
「ちなみに、梓ちゃんも来まーす!笑」
ピタッと、親指が止まった。
……藤宮さんも来るのか。
「…」
気づけば、打ちかけてた「無理」の文字を無言で消してた。
画面の上に、彼女の名前が残っているだけで、
胸の奥に、じんわり熱が灯る。
なんてことないスタンプの絵文字が、急に騒がしく見える。
(遊園地なんて、普段なら絶対行かない)
でも。
あの人が行くなら、話は別だ。
彼女の笑う顔が見られるなら、
緊張してはしゃぐ声が聞けるなら、
一緒にその空間にいられるなら——悪くないって思った。
「行く」
それだけ返して、スマホを伏せた。
すぐに返ってくる悠人のメッセージ。
「絶対断ると思ったのに〜。やっぱ梓ちゃん効果?笑」
(……やかましい)
こめかみを押さえながらも、口元だけ、ゆるんでいた。
やっぱり、バレてんだな。
でももう、隠すのも下手になってきた気がする。
スマホを置いたあとも、 心のどこかが落ち着かなかった。

