不思議な町の喫茶店


入れ違いになったお客様からはコーヒーの香りがしていた。
小雨が降っていた空に晴れ間が出てきたころ、俺は慣れ親しんだ店のドアを引く。

「ただいま~カイ!二日間ありがとう~」

「おかえり、リク…」

久しぶりに会った弟は、心なしか疲れているように見えた。

「なにかあったの~?そんなに今日、お客様多かった?」

首を傾げて聞くと、一言「…コーヒー」と答えが返ってきた。

「今日のお客さん…やたらコーヒーばかり頼む人で……豆を挽く手が辛い……おかげで淹れ方は上手になったけど…」

「あ~、うちのコーヒー、注文が入るたびに一杯ずつ豆を挽いてるからね~…お疲れ様だね~」

いいこ、いいこ…頭をなでていると、普段は「…やめて」と言い放つ弟が、静かになでられていた。
よほど疲れたのだろう。

「明日の業務は俺一人でしようか~?」

「いや…それより、あいつの店のこと…なにか分かった…?」

“あいつの店のこと”…その言葉に、頭をなでていた手を止めた。

「…ん~、大体の場所の目星は?」

でもまだ時間がかかりそうだなぁ~、と背伸びをしながら答える。
例の馬鹿げた招待状が送られてから、この二日間で町を巡れるだけ巡ってみた。
だけど店の特定までには至らず、帰ってきたというわけだけど…。

「まぁ、その内見つかるよ~大丈夫大丈夫…さて、片づけを手伝うからね~」

「……うん……」

なにかを言いたげな瞳を、見て見ぬふりしてテーブル上のカップを手に取る。
いつか“あいつ”と交わる日がくるだろう。
そのときに俺達はどんな言葉を交わすんだろう。

窓の外、再び雲が太陽をおおっていた。