からかわないでよ、千景くん。




「私…ほんとは、千景くんと組みたかった」



ぽつりと、呟いた。

言った瞬間、胸がぎゅっとなった。

まくっていた体操服を戻して、そっと立ち上がる。

千景くんは、私の顔を見て、またからかうように笑った。



「そんな顔するくらいなら、俺のとこ来たらよかったのに」



その言葉に、心臓が跳ねる。


(本気…?冗談…?)


分からない。千景くんは、いつもそう。
本音とからかいの境目が曖昧で、私の心を揺らしてくる。

だから、行けないんだよ。 だから、踏み込めない。



「絆創膏ありがとう。千景くん、ちゃんと練習してね!」



そう言って、速足で保健室を出る。

背中に千景くんの視線を感じながら—— 膝の痛みよりも、胸のドキドキの方がずっと強かった。