私も奈垣くんと同じことを考えている。奈垣くんとは半年以上も同じ空間にいたのに、挨拶もしたことはない。奈垣くんがどんな子かも分からないし、奈垣くんも私のことは掴めていないだろう。
それでもこうやって肩の力を抜いて接することができるのは、私が旭に振られたからだと思う。失恋の傷は、時に考えもしない方法で癒えていく。
「家、ここだから。送ってくれてありがとう」
「おう。振り回して悪かったな」
「ううん。奈垣くんが筋肉バカって分かって、良かったし」
「誰得だよ」
またこうやって遊びに行って、バカ言って笑い合いたいな。奈垣くんとなら、自然体で過ごせる。でも、ウザがられるかと考えると言い出せず、次の言葉を探す。
モゾモゾしているうちに、奈垣くんが私の背後に一瞬目をやり、焦ったように私に一歩近づいた。
「ごめん。今から変なことするけど、びっくりしないで」



