○階段下の踊り場
壁を背に戸惑ったような表情の小夜がにこっと爽やかな笑顔を浮かべている海翔に壁ドンをされている。
海翔「俺の彼女になって」
小夜(…恋愛嫌いな私が、どうしてこうなったんだっけ?)
○(回想)
遡ること一時間前…。
○教室
黒板の縦書きに書かれている日付(9月15日)の下に「文化祭まで…あと10日!」と書かれている。
ダンボールや色画用紙、ガムテープやカッターなどが床に散らばっている中、クラスメイト達がダンボールを切ったり色を塗ったりテープを貼ったりしている。
立夏「小夜〜!」
床ではなく机の上でワイシャツの袖を肘までまくり、ダンボールを切りながら後ろを向いていた小夜が、腰まであるサラサラの黒髪をなびかせて振り向く。
華原小夜、16歳。(四角枠で囲う)
小夜はきょとんと首を傾げている。
小夜に高めのツインテールを揺らして萌え袖で白のセーターを着ている立夏が抱きつく。
立夏「カップルコンテスト用の写真、撮ってくれない!?応募期日が明日までなの〜」
小夜「カップルコンテスト…?」
慎太郎「文化祭の初日にあるイベントのことだよ。参加者は校内のカップル限定で、いくつかのステージをクリアして絆が一番強いカップルである“ベストカップル”を決めるんだ」
立夏の後ろからサラサラの黒髪マッシュの髪型をした黒のセーターを着た慎太郎が微笑みながらやってくる。
小夜と立夏は抱き合ったまま。
慎太郎「それに立夏と出るんだ。な?」
慎太郎がさりげなく立夏を小夜から離し、自分の横に連れてくると微笑んで立夏を見下ろす。
立夏も「うんっ」と可愛く笑いながら頷いて慎太郎を見上げている。
荒巻立夏。通称りっちゃん。中学からの親友で甘えることが上手な小動物系女子。(四角枠で囲う)
斎藤慎太郎。通称慎くん。りっちゃんとは中ニの頃から付き合い出して、今も変わらず溺愛中。(四角枠で囲う)
小夜「そんなのがあるんだ。知らなかった」
立夏「小夜は恋愛に興味がないからでしょう?高校生になったんだからまた彼氏作ったらいいのに」
立夏はむうっと頬を膨らませ、あまり興味のなさそうな小夜を見上げる。
小夜「あー写真撮ればいいんだっけ?廊下でいい?」
わざと話を逸らした小夜が、へらっと笑顔を浮かべ立夏の肩を押して廊下に促す。
小夜(恋愛は、もうしないって決めてるから…)
小夜は悲しそうに目を伏せ笑うが、その悲しげな笑顔は誰にも見えない。
○廊下
「パシャパシャ」とカメラのシャッター音が二回。
柱を壁にして立夏と慎太郎が微笑みながら見つめ合う。
その様子を、小夜がスマホを横にして両手で持ちながら「いいよー」と適当に声掛けをしながら右、左、正面からと様々な画角から二人を撮る。
小夜「じゃあ、慎くん、りっちゃんの腰に手を回しておでこもくっつけよう」
小夜がスマホを片手で持ち片目をつぶりながら、びしっと慎太郎に向かって真顔で人差し指を突き出す。
慎太郎「おお、いいな」
立夏「ええ!?そこまでしなくていいよ!参加者一覧としてポスターに載る時に使われる写真だもん!」
乗り気の慎太郎とは逆に、立夏があたふたと両手を振り回しながら赤い顔をして慌てる。
その様子に小夜がにやりと意地悪く笑う。
小夜「ダメダメ。第一印象は大事なんだから」
立夏「もう、小夜ってば!」
首まで真っ赤にして可愛い小さな角が生えていそうなくらい怒って頬を膨らませる立夏に、慎太郎と一緒に笑う。
小夜(りっちゃんのいまだに恥ずかしがるところ、可愛いんだよなぁ)
慎太郎に頬を突っつかれ、怒っていたはずの立夏がふっと吹き出し、二人して笑っている様子を微笑ましい気持ちで見守る。
小夜(りっちゃん達を見てると、私も少しは恋愛がしたいって思う)
小夜(思うけど…)
○(回想)
過去の映像(暗めの描写)がよみがえる。
口元だけ見える男の人。
???「小夜、おまえが悪いんだよ」
○現在に戻る
女子達「きゃあ〜!」
女子達の黄色い悲鳴にハッとスマホを両手に持ったまま小夜が我に返る。
振り向くと、廊下の先から女子を複数人連れて歩いている海翔が、爽やかに微笑みながら近づいてくる。※光が散らばっていて眩しい感じを演出
立夏「わぁ、海翔先輩とその取り巻き軍たち…」
立夏が苦いものを噛んだかのように渋い顔をして海翔に冷めた目を向ける。
ネクタイはゆるく巻かれ白セーターをだぼっと着ていて、両手はズボンのポケットに突っ込まれている。
ふんわりとセットされている柔らかそうな黒髪の下には、両耳に一つずつリングのピアスが付けられていて窓の外の光を受けて光っている。
水嶋海翔、17歳。甘い言葉で学園中の女子を虜にするチャラ男モテ男子。
女子「見て海翔!ネイル変えたのぉ」
海翔「ふーん、いいじゃん。似合ってる」
横にいた女子が手を差し出し、それに対して海翔がにこやかに答えている。
女子はきゃっと嬉しそうに頰に手を当てる。
小夜(私とは縁のないような人)
ふと、顔を上げた海翔と小夜の視線が交わる。
小夜は反射的に目を逸らし、手元のスマホに視線を落とす。
その横を海翔たちが通り過ぎて行ってしまう。
立夏「海翔先輩は誰とカップルコンテスト出るんだろうね〜」
小夜「え?」
立夏がうーんと考え込むような仕草で去って行った海翔たちの方向を眺める。
慎太郎「海翔先輩の親友が生徒会長だろ?だから、盛り上げ役としてカップルコンテストに絶対出てくれって海翔先輩に頼んだらしい」
○(慎太郎の回想)
慎太郎は生徒会書記。
生徒会長(隼斗)「頼む!親友からのお願い!」
海翔「仕方ないな…」
生徒会長が両手を合わせながら海翔に頼んでいる。
それに海翔が渋々といった様子で頷いている。
○現在に戻る
小夜「学園一の有名人なんだから、相手くらいすぐに見つかるんじゃないの?」
立夏「んー海翔先輩って遊んでる噂はたくさんあるんだけど、彼女がいるって話は一度も聞いたことないんだよね。遊びだから本気の恋はしないんじゃない?」
小夜「へぇ…」
立夏に答えながら、小夜も海翔が去って行った方に視線を向ける。
小夜(ま、私には関係ないことだしどうでもいいか)
クラスメイトの女子「あ、ねえねえそこの誰か。購買部でガムテープ五個買ってきてくれない?」
教室からひょっこりと顔を覗かせてきたクラスメイトの女子に三人が振り向く。
小夜「私行くよ。五個買えばいいんだよね」
クラスメイトの女子「ありがとう、小夜〜」
申し訳なさそうに両手を合わせてお礼を伝えるクラスメイトに小夜はにこっと笑いかけ、立夏と慎太郎もありがとうと両手を合わせている。
○階段
腕に購買部で購入したガムテープ五個を抱えながら小夜が階段を上っていると、話し声が聞こえてきて顔を上げる。
小夜(ん?誰かいる…?)
ひょこっと階段から上に顔を覗かせると、階段上の踊り場で海翔と頬を赤く染めた髪の長い女の子が向き合っている。
女子生徒「私ね、海翔のことが本気で好きなの。だから一緒にカップルコンテスト出たいなーって」
小夜(これって、告白現場…?)
小夜はげっと嫌そうに顔をしかめる。
小夜(違う道から帰るか…)
戻ろうとすると、ふと視線を向けてきた海翔と目が合う。
小夜(あ、やば…)
海翔「…俺、もう出る子決まってるんだよね」
女子生徒「え?」
海翔は小夜に視線を向けたまま、人差し指を下に向ける。
それに釣られて女子生徒も振り向く。
小夜(えっ、なに?)
小夜は驚いたようにぽかーんと目と口を見開く。
海翔「あの子」
小夜「えっ」
海翔はにこっと微笑みながら答えると、階段を下がって小夜の隣に来る。
海翔「だから、ごめんね?諦めて」
小夜の肩にさりげなく腕を組んでくると、女子生徒に向かって下から笑いかける。
そのまま「ちょっと」と何か言いたげな小夜を連れて海翔は階段を下がっていく。
○階段下の踊り場
小夜「ちょっと、どういうことですか?」
小夜は壁を背に、目の前でニコニコと笑顔を浮かべている海翔に向かって睨みつける。
海翔「だってあの子しつこいんだもん。ちょうどいいところに現れた君のこと利用しちゃった」
小夜「困ります。なんでよりによって私なんですか?」
海翔はきょとんと首を傾げる。
海翔「んー運命を感じたから?」
小夜「ふざけないでください!」
小夜は怒ったように頬を膨らませる。
海翔はそんな小夜にふっと柔らかく笑う。
海翔「文化祭が終わるまででいいからさ、俺の彼女のフリしてくれない?」
小夜「だから、嫌だって言ってるじゃないですか!私もう行きますね」
小夜は海翔の横を通り過ぎて去ろうとする。
が、海翔が小夜の行く手を阻むように片手を壁につき、壁ドンをする。
驚いたように小夜が海翔に視線を向ける。
海翔「俺の彼女になって」
海翔が意地悪くにやりと笑いながら壁ドンをして小夜を見つめるドアップの姿。
小夜「な…っ」
言い返すことができなくて戸惑いながら、顔をほんのり赤くして口をぱくぱくと開ける小夜のドアップの姿。
小夜モノローグ(–––この時の私は、まだ気づいていなかった)
小夜モノローグ(先輩の裏の顔があるってことに)
小夜モノローグ(このニセカノジョも、先輩の作戦通りだったってことに…)
壁を背に戸惑ったような表情の小夜がにこっと爽やかな笑顔を浮かべている海翔に壁ドンをされている。
海翔「俺の彼女になって」
小夜(…恋愛嫌いな私が、どうしてこうなったんだっけ?)
○(回想)
遡ること一時間前…。
○教室
黒板の縦書きに書かれている日付(9月15日)の下に「文化祭まで…あと10日!」と書かれている。
ダンボールや色画用紙、ガムテープやカッターなどが床に散らばっている中、クラスメイト達がダンボールを切ったり色を塗ったりテープを貼ったりしている。
立夏「小夜〜!」
床ではなく机の上でワイシャツの袖を肘までまくり、ダンボールを切りながら後ろを向いていた小夜が、腰まであるサラサラの黒髪をなびかせて振り向く。
華原小夜、16歳。(四角枠で囲う)
小夜はきょとんと首を傾げている。
小夜に高めのツインテールを揺らして萌え袖で白のセーターを着ている立夏が抱きつく。
立夏「カップルコンテスト用の写真、撮ってくれない!?応募期日が明日までなの〜」
小夜「カップルコンテスト…?」
慎太郎「文化祭の初日にあるイベントのことだよ。参加者は校内のカップル限定で、いくつかのステージをクリアして絆が一番強いカップルである“ベストカップル”を決めるんだ」
立夏の後ろからサラサラの黒髪マッシュの髪型をした黒のセーターを着た慎太郎が微笑みながらやってくる。
小夜と立夏は抱き合ったまま。
慎太郎「それに立夏と出るんだ。な?」
慎太郎がさりげなく立夏を小夜から離し、自分の横に連れてくると微笑んで立夏を見下ろす。
立夏も「うんっ」と可愛く笑いながら頷いて慎太郎を見上げている。
荒巻立夏。通称りっちゃん。中学からの親友で甘えることが上手な小動物系女子。(四角枠で囲う)
斎藤慎太郎。通称慎くん。りっちゃんとは中ニの頃から付き合い出して、今も変わらず溺愛中。(四角枠で囲う)
小夜「そんなのがあるんだ。知らなかった」
立夏「小夜は恋愛に興味がないからでしょう?高校生になったんだからまた彼氏作ったらいいのに」
立夏はむうっと頬を膨らませ、あまり興味のなさそうな小夜を見上げる。
小夜「あー写真撮ればいいんだっけ?廊下でいい?」
わざと話を逸らした小夜が、へらっと笑顔を浮かべ立夏の肩を押して廊下に促す。
小夜(恋愛は、もうしないって決めてるから…)
小夜は悲しそうに目を伏せ笑うが、その悲しげな笑顔は誰にも見えない。
○廊下
「パシャパシャ」とカメラのシャッター音が二回。
柱を壁にして立夏と慎太郎が微笑みながら見つめ合う。
その様子を、小夜がスマホを横にして両手で持ちながら「いいよー」と適当に声掛けをしながら右、左、正面からと様々な画角から二人を撮る。
小夜「じゃあ、慎くん、りっちゃんの腰に手を回しておでこもくっつけよう」
小夜がスマホを片手で持ち片目をつぶりながら、びしっと慎太郎に向かって真顔で人差し指を突き出す。
慎太郎「おお、いいな」
立夏「ええ!?そこまでしなくていいよ!参加者一覧としてポスターに載る時に使われる写真だもん!」
乗り気の慎太郎とは逆に、立夏があたふたと両手を振り回しながら赤い顔をして慌てる。
その様子に小夜がにやりと意地悪く笑う。
小夜「ダメダメ。第一印象は大事なんだから」
立夏「もう、小夜ってば!」
首まで真っ赤にして可愛い小さな角が生えていそうなくらい怒って頬を膨らませる立夏に、慎太郎と一緒に笑う。
小夜(りっちゃんのいまだに恥ずかしがるところ、可愛いんだよなぁ)
慎太郎に頬を突っつかれ、怒っていたはずの立夏がふっと吹き出し、二人して笑っている様子を微笑ましい気持ちで見守る。
小夜(りっちゃん達を見てると、私も少しは恋愛がしたいって思う)
小夜(思うけど…)
○(回想)
過去の映像(暗めの描写)がよみがえる。
口元だけ見える男の人。
???「小夜、おまえが悪いんだよ」
○現在に戻る
女子達「きゃあ〜!」
女子達の黄色い悲鳴にハッとスマホを両手に持ったまま小夜が我に返る。
振り向くと、廊下の先から女子を複数人連れて歩いている海翔が、爽やかに微笑みながら近づいてくる。※光が散らばっていて眩しい感じを演出
立夏「わぁ、海翔先輩とその取り巻き軍たち…」
立夏が苦いものを噛んだかのように渋い顔をして海翔に冷めた目を向ける。
ネクタイはゆるく巻かれ白セーターをだぼっと着ていて、両手はズボンのポケットに突っ込まれている。
ふんわりとセットされている柔らかそうな黒髪の下には、両耳に一つずつリングのピアスが付けられていて窓の外の光を受けて光っている。
水嶋海翔、17歳。甘い言葉で学園中の女子を虜にするチャラ男モテ男子。
女子「見て海翔!ネイル変えたのぉ」
海翔「ふーん、いいじゃん。似合ってる」
横にいた女子が手を差し出し、それに対して海翔がにこやかに答えている。
女子はきゃっと嬉しそうに頰に手を当てる。
小夜(私とは縁のないような人)
ふと、顔を上げた海翔と小夜の視線が交わる。
小夜は反射的に目を逸らし、手元のスマホに視線を落とす。
その横を海翔たちが通り過ぎて行ってしまう。
立夏「海翔先輩は誰とカップルコンテスト出るんだろうね〜」
小夜「え?」
立夏がうーんと考え込むような仕草で去って行った海翔たちの方向を眺める。
慎太郎「海翔先輩の親友が生徒会長だろ?だから、盛り上げ役としてカップルコンテストに絶対出てくれって海翔先輩に頼んだらしい」
○(慎太郎の回想)
慎太郎は生徒会書記。
生徒会長(隼斗)「頼む!親友からのお願い!」
海翔「仕方ないな…」
生徒会長が両手を合わせながら海翔に頼んでいる。
それに海翔が渋々といった様子で頷いている。
○現在に戻る
小夜「学園一の有名人なんだから、相手くらいすぐに見つかるんじゃないの?」
立夏「んー海翔先輩って遊んでる噂はたくさんあるんだけど、彼女がいるって話は一度も聞いたことないんだよね。遊びだから本気の恋はしないんじゃない?」
小夜「へぇ…」
立夏に答えながら、小夜も海翔が去って行った方に視線を向ける。
小夜(ま、私には関係ないことだしどうでもいいか)
クラスメイトの女子「あ、ねえねえそこの誰か。購買部でガムテープ五個買ってきてくれない?」
教室からひょっこりと顔を覗かせてきたクラスメイトの女子に三人が振り向く。
小夜「私行くよ。五個買えばいいんだよね」
クラスメイトの女子「ありがとう、小夜〜」
申し訳なさそうに両手を合わせてお礼を伝えるクラスメイトに小夜はにこっと笑いかけ、立夏と慎太郎もありがとうと両手を合わせている。
○階段
腕に購買部で購入したガムテープ五個を抱えながら小夜が階段を上っていると、話し声が聞こえてきて顔を上げる。
小夜(ん?誰かいる…?)
ひょこっと階段から上に顔を覗かせると、階段上の踊り場で海翔と頬を赤く染めた髪の長い女の子が向き合っている。
女子生徒「私ね、海翔のことが本気で好きなの。だから一緒にカップルコンテスト出たいなーって」
小夜(これって、告白現場…?)
小夜はげっと嫌そうに顔をしかめる。
小夜(違う道から帰るか…)
戻ろうとすると、ふと視線を向けてきた海翔と目が合う。
小夜(あ、やば…)
海翔「…俺、もう出る子決まってるんだよね」
女子生徒「え?」
海翔は小夜に視線を向けたまま、人差し指を下に向ける。
それに釣られて女子生徒も振り向く。
小夜(えっ、なに?)
小夜は驚いたようにぽかーんと目と口を見開く。
海翔「あの子」
小夜「えっ」
海翔はにこっと微笑みながら答えると、階段を下がって小夜の隣に来る。
海翔「だから、ごめんね?諦めて」
小夜の肩にさりげなく腕を組んでくると、女子生徒に向かって下から笑いかける。
そのまま「ちょっと」と何か言いたげな小夜を連れて海翔は階段を下がっていく。
○階段下の踊り場
小夜「ちょっと、どういうことですか?」
小夜は壁を背に、目の前でニコニコと笑顔を浮かべている海翔に向かって睨みつける。
海翔「だってあの子しつこいんだもん。ちょうどいいところに現れた君のこと利用しちゃった」
小夜「困ります。なんでよりによって私なんですか?」
海翔はきょとんと首を傾げる。
海翔「んー運命を感じたから?」
小夜「ふざけないでください!」
小夜は怒ったように頬を膨らませる。
海翔はそんな小夜にふっと柔らかく笑う。
海翔「文化祭が終わるまででいいからさ、俺の彼女のフリしてくれない?」
小夜「だから、嫌だって言ってるじゃないですか!私もう行きますね」
小夜は海翔の横を通り過ぎて去ろうとする。
が、海翔が小夜の行く手を阻むように片手を壁につき、壁ドンをする。
驚いたように小夜が海翔に視線を向ける。
海翔「俺の彼女になって」
海翔が意地悪くにやりと笑いながら壁ドンをして小夜を見つめるドアップの姿。
小夜「な…っ」
言い返すことができなくて戸惑いながら、顔をほんのり赤くして口をぱくぱくと開ける小夜のドアップの姿。
小夜モノローグ(–––この時の私は、まだ気づいていなかった)
小夜モノローグ(先輩の裏の顔があるってことに)
小夜モノローグ(このニセカノジョも、先輩の作戦通りだったってことに…)

