君の隣にいたいだけ

次の日も、美咲は変わらず一人で過ごしていた。

授業中も、昼休みも、教室の片隅で静かに本を読んだり、窓の外をぼんやり眺めたり。
だけど、悠真はその日も、諦めずに彼女のそばにいた。
放課後、教室に残った美咲が席を立とうとすると、悠真は声をかけた。

「今日も一緒に帰らない?」

美咲は戸惑いながらも、何かに引かれるようにうなずいた。
彼と話すのはまだぎこちなく、言葉も少なかったけれど、隣を歩くその時間は確かに彼女の心を暖めていた。

「ねぇ、美咲」
悠真がふと立ち止まり、空を見上げた。

「俺、昔から思ってたんだ。君のこと、もっと知りたいって。君の笑顔を見たいって。」

美咲はその言葉に胸が締めつけられ、目に涙があふれそうになった。
誰かにこんな風に想われることが、彼女にはまだ信じられなかった。

「ありがとう、悠真」
小さな声でつぶやいた。

それは、彼女が初めて自分の気持ちを少しだけ開いた瞬間だった。