先生は時計を確認し、俺を見合わせる。
何かの合図で、心を探っている気もする。
「生徒はどうだ?」
「生徒?」
「生徒に触れ合うことに対して不快を感じることは?
フラッシュバックすることはあるか?」
俺が被害を受けた当初、母親の年齢は二十代。
とてもじゃないけど、生徒にそんな年相応の面影はない。
「まさか。
相手は子供だ。
そんな面影はない」
松山先生は「そうか」と卵白な反応。
本題は、そこではないらしい。
一幕時間を開けて、口を開いた。
「辛かったら言わなくてもいい。
だが、情報を集めたほうが対策は取れる。
まだ情報を詳しく話続けたほうがいいか?
整理したほうがいいか?」
それは俺に対して「これ以上踏み込まないほうがいいのか?」。
「それとも踏み込んだほうがいいのか?」という提示なのだろう。
踏み込んでほしくない気持ちもある。
だが、それでは前に進まない。
だからこそ、カウンセリングを受けているのだと自分に課して。
「そうだな。
そうしてもらったほうが、嬉しい」
と無理に、はにかんで見せる。
それを見た、カウンセラーは苦笑。
相手はプロの心理学を学んでいる。
だからこちらの容態は見透かされているのだろう。
だけども止める意識はないと、分かってくるたようで。
「なら聞く。
辛かったら答えるな」
耳を傾ける。
「母親からの不倫が辛いのか」
先生は間をおいて。
「性的暴行か?」
また先生は、間をおいて。
ーどちらの受けた傷を先に和らげたいか?ー
ゆっくりと諭すように、こちらへ返答を求める。
「うーん……」
正直、どちらとも言い難いから、悩みどころではある。
どちらも俺にとって許されない行為であることには変わりない。
そして今でも被害は多大だ。
暴行行為そのものが憎むべきなんだろうけどーーー本心は違う。
「不倫された事が辛い」
と口走っていた。


