やっぱり君が好きだ

「はい、席に座ってください!」担任の先生の声で目が覚めた。
「今日からこの3年3組になった、永谷陽人(ながたにはると)君です。自己紹介どうぞ。」
「はい、今日からこのクラスに転校してきた永谷陽人です。よろしくお願いします。」緊張しているはずなのに落ち着いた低い声。教室中がざわついた。席に座るまでの数秒間、私は目が離せなかった。
「ねえ、陽人君、めっちゃイケメンじゃない。」菜々が私にそう言う。
「ね、私も思った。」胸の奥がくすぐったかった。今までとは違う転校生は私の心を掴んだ。

 次の日、席替えがあった。
 くじ引きを引くと──陽人君と隣になった。これは偶然。いや運命なのかもしれない。
 緊張しつつも声をかけてみた。
「これからよろしくね。」
 少し驚いた表情をしつつ、「こちらこそよろしく。」と返してくれた。ただそれだけで私の胸は熱くなった。顔も赤面しているのかもしれない。
 私は昨日偶然聞いた話を思い出した。

「ねえねえ、知ってる?あの転校してきた子心臓が悪いらしくて、またすぐ転校するみたいだよ。」
「そうなんだ、可哀想だね。」
 帰り道、クラスの女子が話していた噂を私は聞いてしまった。だからこそ私は陽人君に優しくすることを決めた。

「ねえねえ、白石さんって転校したことある?」
 ふいに授業中、陽人君が話しかけてきた。
「ううん、ないよ。」
「そうなんだね。」そう悲しそうに話す陽人君は何度も転校する辛さを味わったのだろう。
 私は彼の気持ちを少しでも分かるようになりたいと思った。
 帰り道、私はいつも通り菜々と下校した。
「ねえ花凛、陽人君のこと好きでしょ?」といたずらっぽく菜々が私に言う。
「え、なんでわかったの?」と照れ臭く私は言う。
「当たり前じゃん、親友だよ?しかも陽人君と話してる時いつも顔赤すぎ。そんなの分かるに決まってるじゃん。」と胸を張って言う。
「そうなの。初めて見た時に一目惚れしちゃって。」恥ずかしい。
「あんだけカッコいいもんね。私応援してるからね。何か相談ある?」
「ありがとう。でも今のところは大丈夫そ。席も近くなったから」
「そっか、なら安心!頑張ってね。じゃあ今日塾だからバイバイ。」
 そう言って菜々は反対側へ行った。神様は今、私に優しい。この調子で沢山話したい。私はウキウキしながら家に帰った。