やっぱり君が好きだ

 僕は、昔から心臓が弱かった。そのため、たくさんの病院を通わなければいけなかった。だから学校に行く日も、クラスメイトと同じ時間を過ごすことはほとんどなかった。だから──友達はできたことがなかった。そして転校する。その繰り返しだった。名前を覚えられる前に消える。それが僕だった。
 だけどこの春は違った。中学3年生の春。桜が舞う登校初日。栃木県の中にある小さな学校にやってきた。

 そこに彼女はいた。

 艶のある黒髪をポニーテールに結んだ彼女を、無意識に目で追ってしまった。多分、恋をしてしまった。
 その子の名を白石花凛(しらいしかりん)と言うらしい。
*                      *
 今年の春は例年よりも桜が散っている気がする。春風が吹くたび、花びらはふわりと舞う。何かいいことがあるのかもしれない。そんな期待を胸に私は門をくぐった。
 教室に入ると親友の尾木奈々(おぎなな)がいた。丸い目をし、ぷっくらした頬をもつ菜々は私を見て駆け寄ってきた。
「今年も同じクラスで嬉しい!今年はなんと転校生が来るらしいよ!」
「ほんと!楽しみだね。」今まで転校生がきたことはたくさんあった。だけど私の心を掴む人はいなかった。だから今回もそう思っていた。
 だけどその時。教室のドアが開いた。そこにいたのは、ぱっちりとした二重まぶたを持った瞳。鼻筋はすっと通っていて、輪郭はやわらかいのにどこか整ったそんな男の子がいた。
「……かっこいい……」
 思わず、心の中でつぶやいてしまった。
 黒髪は少し長めで、前髪が自然に目元にかかっている。その隙間から覗くその二重の瞳が、なぜか頭から離れなかった。
 その瞬間だった、私が彼に恋をしたのは。