数日後、傭兵団拠点の前で私は出立の準備をしていた。会合にて亜人同盟への参加が決定したからである。
私も参加することになった理由は【鉄獣武闘団】から亜人の希望である魔痕の女を顔合わせがしたいと希望があったからだ。
これに関しても会議は荒れた。先方のいいなりになるべきではない、いいや我等が主導権を握るにあたり正当性を主張するためには必要だ、危険過ぎる等と結論が出ない。
最終的には、
「あの………私、行きますっ……」
と私がおずおずと手を上げたことで決定した。危険は承知であったけれど私も今は【赤竜の覇団】の一員だ。皆の力にもなりたい想いもある。何より、せっかく自由の身になったのだ、籠の鳥は御免だった。私だってあれから鉱山町ほどの大事はないけれど何度か傭兵の仕事にもついていかせてもらっている。ただの会合であれば大丈夫なはずだ。
……だけど出立の時はどうも毎回寂しい気持ちになって拠点、我が家を振り返ってしまう。我が家、我が家か……いつから私はここを自分の家と認識できるようになったのだろうか。生家ですらそう思えたことはないのに……。
「おーーーい!ヴェルゼ行くぞ!」
背後から馬に乗ったヴィシャスに急かされた。
「…………わかってる」
「ほらよ」
彼は馬の鞍に軽く跨がったまま、手を差し伸べる。
大きな手が私の細い手を優しく包む。触れた瞬間、温かさが伝わり心臓が少し速くなった。私は頷き、彼の手を借りて馬の背に上がる。ヴィシャスが私の背中に寄り添う形だ。
彼の身体が密着。厚い胸板の感触が衣服越しに感じられて、硬いのに温かい。照れくさいけれど私に運動神経はないらしく、乗馬の練習はさせてもらっても中々上達しなかった。こうやってヴィシャスに乗せてもらうしかない。
「大丈夫か? 落ちねえように、俺に掴まってろよ」
彼の声が荒々しくもこちらを慮るように響き、手が私の身体の横を通って手綱を握る。まるで抱きつかれているみたいで、頰が熱くなった。
もどかしい気持ちになり意味もなくもぞもぞしてしまう。
「まーた、家を見てたのか。んな今生の別れってわけでもねーし。そう惜しむなよ」
「…………それは……そうだけど」
情緒ってものを理解して欲しい。
「心配すんなよ、ただ会合に出て帰ってくるだけだ」
後ろから頭をポン、と撫でられた。子供扱いしないで欲しい。少し頬を膨らませる。
「カカッ。また、ここで「ただいま」って言おうな」
「…………うん」
「じゃ、行くぜ!」
ヴィシャスが馬を仲間の元へ歩かせる。全員で行く訳にもいかないが、ラビィルさんにガルフ、ナイゼルの主要メンバーはもちろん傭兵団の構成員数名で会合に向かうことになっていた。
「へへ、お前が近くにいると、俺も嬉しいぜ。役得だな♪」
馬の歩みに合わせて体が揺れ、密着度が増す。
「…………もう」
意識しないようしていたことを言及しないで欲しい。
「ヴィシャス……同盟の会合、うまくいくかな?私が言った事だけど……ついてって本当に大丈夫かな?」
私は照れ隠しするように尋ねる。
「心配すんな。俺がお前を守る。トップになって、皆も導くぜ。ヴェルゼもオレを支えてくれよな!」
「………善処します」
とだけ言っておこう、保証はできない。ちなみに意外にもヴィシャスは私が亜人同盟結成の会合に出向くことに当初は渋っていた。でも会議で決まった以上はもう自分が守ればいいという方向に意識を切り替えたみたい。私に不安を感じさせないよう自信満々の態度に戻っている。
旅の始まりは、緊張とワクワクを同時に与えてくれる。
目的地までの道のりは長いけど、彼と一緒なら、どんなことがあっても大丈夫だろう。私は緩んだ顔がすぐ後ろのヴィシャスに見られないことにほっとした。
私も参加することになった理由は【鉄獣武闘団】から亜人の希望である魔痕の女を顔合わせがしたいと希望があったからだ。
これに関しても会議は荒れた。先方のいいなりになるべきではない、いいや我等が主導権を握るにあたり正当性を主張するためには必要だ、危険過ぎる等と結論が出ない。
最終的には、
「あの………私、行きますっ……」
と私がおずおずと手を上げたことで決定した。危険は承知であったけれど私も今は【赤竜の覇団】の一員だ。皆の力にもなりたい想いもある。何より、せっかく自由の身になったのだ、籠の鳥は御免だった。私だってあれから鉱山町ほどの大事はないけれど何度か傭兵の仕事にもついていかせてもらっている。ただの会合であれば大丈夫なはずだ。
……だけど出立の時はどうも毎回寂しい気持ちになって拠点、我が家を振り返ってしまう。我が家、我が家か……いつから私はここを自分の家と認識できるようになったのだろうか。生家ですらそう思えたことはないのに……。
「おーーーい!ヴェルゼ行くぞ!」
背後から馬に乗ったヴィシャスに急かされた。
「…………わかってる」
「ほらよ」
彼は馬の鞍に軽く跨がったまま、手を差し伸べる。
大きな手が私の細い手を優しく包む。触れた瞬間、温かさが伝わり心臓が少し速くなった。私は頷き、彼の手を借りて馬の背に上がる。ヴィシャスが私の背中に寄り添う形だ。
彼の身体が密着。厚い胸板の感触が衣服越しに感じられて、硬いのに温かい。照れくさいけれど私に運動神経はないらしく、乗馬の練習はさせてもらっても中々上達しなかった。こうやってヴィシャスに乗せてもらうしかない。
「大丈夫か? 落ちねえように、俺に掴まってろよ」
彼の声が荒々しくもこちらを慮るように響き、手が私の身体の横を通って手綱を握る。まるで抱きつかれているみたいで、頰が熱くなった。
もどかしい気持ちになり意味もなくもぞもぞしてしまう。
「まーた、家を見てたのか。んな今生の別れってわけでもねーし。そう惜しむなよ」
「…………それは……そうだけど」
情緒ってものを理解して欲しい。
「心配すんなよ、ただ会合に出て帰ってくるだけだ」
後ろから頭をポン、と撫でられた。子供扱いしないで欲しい。少し頬を膨らませる。
「カカッ。また、ここで「ただいま」って言おうな」
「…………うん」
「じゃ、行くぜ!」
ヴィシャスが馬を仲間の元へ歩かせる。全員で行く訳にもいかないが、ラビィルさんにガルフ、ナイゼルの主要メンバーはもちろん傭兵団の構成員数名で会合に向かうことになっていた。
「へへ、お前が近くにいると、俺も嬉しいぜ。役得だな♪」
馬の歩みに合わせて体が揺れ、密着度が増す。
「…………もう」
意識しないようしていたことを言及しないで欲しい。
「ヴィシャス……同盟の会合、うまくいくかな?私が言った事だけど……ついてって本当に大丈夫かな?」
私は照れ隠しするように尋ねる。
「心配すんな。俺がお前を守る。トップになって、皆も導くぜ。ヴェルゼもオレを支えてくれよな!」
「………善処します」
とだけ言っておこう、保証はできない。ちなみに意外にもヴィシャスは私が亜人同盟結成の会合に出向くことに当初は渋っていた。でも会議で決まった以上はもう自分が守ればいいという方向に意識を切り替えたみたい。私に不安を感じさせないよう自信満々の態度に戻っている。
旅の始まりは、緊張とワクワクを同時に与えてくれる。
目的地までの道のりは長いけど、彼と一緒なら、どんなことがあっても大丈夫だろう。私は緩んだ顔がすぐ後ろのヴィシャスに見られないことにほっとした。
