拠点に戻り、会議場に行く。
扉を開けると今現在、外部の仕事に出かけていない幹部クラスは全員集まっているようだった。
物々しい雰囲気だ。だけどどこか熱気と期待を感じる。悪いニュースではないのかもしれない。
傭兵団のボスであるヴィシャスの席は一段上の上座に配置され、下に置かれた円卓の幹部達を見下ろす形だ。私は彼のすぐ横に置かれた席に座る。
円卓にいたガルフが手を振ってくれたので私も小さく手を上げた。
「母ちゃん、それで要件ってなんだ?」
ドカッと勢いよく席に着く。
「すぐ話すから急ぐでない」
ラビィルさんが最後に会議場に入り扉を閉めると全員がよく見える場所に立つ。
「ゴホン、諸君らよく集まったのう」
咳ばらいをして話始める。幹部達も姿勢を正し傾聴する。傭兵団の創設者にして先代ボスの威光は今でも健在だ。
「【鉄獣武闘団】の使者から通達があった。大規模な反抗作戦を行うため亜人同盟を組みたいとな。儂等以外にも有力な亜人を中心とした組織に声をかけておるようじゃ」
「亜人同盟?」
知らない単語だ。
「んだよ、そりゃ?」
ヴィシャスも知らないようだった。
「要するに儂らみたいな亜人組織同士で連合を組まないかという話じゃな。」
「ふーん、仲良くしてぇってことか。いいんじゃねぇの?」
「たわけ!話は最後まできけ」
ヴィシャスが頭を叩かれる。
えぇ……私も仲間が増えるならいいことだと思ったけれど。
「どうも【鉄獣武闘団】の奴等、大規模な反抗作戦を企んでおるみたいじゃ。実質的な革命じゃな」
「…………」
どうも物騒な話になってきた。心臓の鼓動が早まる。
「亜人を差別から解放するんだろ?オレ達と同じじゃねーか」
「……うむ。じゃが連中は血の気が多すぎる。亜人も人間も関係なく平気で襲う上に構成員には犯罪者、脛に疵を持つ者が多くいる。過去に略奪や大量殺戮も平気で犯しておる連中じゃ。おまけに政権を奪取した暁には全ての人間を奴隷に、亜人も逆らう者は容赦しないと公言しておる。儂は好かん」
渋い顔でラビィルさんは語る。乱暴者の人達なら関わり合いにはなりたくないなぁ……。ヴィシャスも乱暴だが、それとは質が違う悪辣さを感じる。
「けっ!ならこの話はなしだな。ウチの傭兵団には人間種だった在籍してんだ。全て一緒くたに人間を虐げるつもりなら組むこたぁ出来ねえよ。オレだってクソ野郎は嫌いだ」
私も人間だし、傭兵には人間の仲間もいる。いや、私達と関わりがなくともイイ人だっていっぱいいるはずだ。個人の人格に関係なく人間全体を敵視する集団は怖い。
「ことはそうもいかん。今は時代がうねりを上げておる。万が一にも革命が成功すれば連中が国の主権を握ることになりかねん。協力しなかった儂等を爪はじきにしてな。失敗すればなお悪い、亜人が負け弾圧が強まる。平等な関係など更に遠のくじゃろう……」
ラビィルさんが俯く。難しい話のようだ。
「…………」
会議場に静寂がおりる。
「しっ」
パンっとヴィシャスが右拳を自分の左手に打ち付け笑う。
「簡単な話じゃねーか。要は連中に好き勝手させるのもまずい。亜人同盟が負けるのもまずいって話だろ」
一人一人の顔を見回す。……自信満々のようだけど、うーん、今の話をヴィシャスが理解できたか不安だ。
「ならオレらが亜人同盟のトップに立った上で勝っちまえばいい!」
勢いよく立ち上がる。
「オレが亜人同盟のトップになれば負けるはずがねぇ。更に!連中が弱者を虐げねぇようオレが見張って頭を押さえつけちまえばいいんだけの話だろ」
これで万事うまく収まるって寸法よ。と彼はそう言い切った。
「…………」
意外だ、できるかどうかはともかく筋は通っている。もっと馬鹿なことを言い出すこと思っていた。少し見くびりすぎていたようである。
ふと、ラビィルさんの方を見ると彼女はうんうんと頷いていた。どうやら彼女はあえて黙ってヴィシャスが答えを出すことを待っていたみたい。
「やりましょう!」
「ええ!俺達が世界を変えるんです!」
「さっすがアニキだ!」
幹部達も興奮して立ち上がる。すごい熱気。
私も何となく熱い気持ちになる。ヴィシャスがいつも自信満々に言い切る所は何故か胸を熱くし信じたい想いがこみ上げる。きっと皆同じなのだ。
パン、ラビィルさんが手を叩く。
「話は決まったようじゃな。我らは亜人同盟に加入する!そして組織の主導権を握るのじゃ!」
扉を開けると今現在、外部の仕事に出かけていない幹部クラスは全員集まっているようだった。
物々しい雰囲気だ。だけどどこか熱気と期待を感じる。悪いニュースではないのかもしれない。
傭兵団のボスであるヴィシャスの席は一段上の上座に配置され、下に置かれた円卓の幹部達を見下ろす形だ。私は彼のすぐ横に置かれた席に座る。
円卓にいたガルフが手を振ってくれたので私も小さく手を上げた。
「母ちゃん、それで要件ってなんだ?」
ドカッと勢いよく席に着く。
「すぐ話すから急ぐでない」
ラビィルさんが最後に会議場に入り扉を閉めると全員がよく見える場所に立つ。
「ゴホン、諸君らよく集まったのう」
咳ばらいをして話始める。幹部達も姿勢を正し傾聴する。傭兵団の創設者にして先代ボスの威光は今でも健在だ。
「【鉄獣武闘団】の使者から通達があった。大規模な反抗作戦を行うため亜人同盟を組みたいとな。儂等以外にも有力な亜人を中心とした組織に声をかけておるようじゃ」
「亜人同盟?」
知らない単語だ。
「んだよ、そりゃ?」
ヴィシャスも知らないようだった。
「要するに儂らみたいな亜人組織同士で連合を組まないかという話じゃな。」
「ふーん、仲良くしてぇってことか。いいんじゃねぇの?」
「たわけ!話は最後まできけ」
ヴィシャスが頭を叩かれる。
えぇ……私も仲間が増えるならいいことだと思ったけれど。
「どうも【鉄獣武闘団】の奴等、大規模な反抗作戦を企んでおるみたいじゃ。実質的な革命じゃな」
「…………」
どうも物騒な話になってきた。心臓の鼓動が早まる。
「亜人を差別から解放するんだろ?オレ達と同じじゃねーか」
「……うむ。じゃが連中は血の気が多すぎる。亜人も人間も関係なく平気で襲う上に構成員には犯罪者、脛に疵を持つ者が多くいる。過去に略奪や大量殺戮も平気で犯しておる連中じゃ。おまけに政権を奪取した暁には全ての人間を奴隷に、亜人も逆らう者は容赦しないと公言しておる。儂は好かん」
渋い顔でラビィルさんは語る。乱暴者の人達なら関わり合いにはなりたくないなぁ……。ヴィシャスも乱暴だが、それとは質が違う悪辣さを感じる。
「けっ!ならこの話はなしだな。ウチの傭兵団には人間種だった在籍してんだ。全て一緒くたに人間を虐げるつもりなら組むこたぁ出来ねえよ。オレだってクソ野郎は嫌いだ」
私も人間だし、傭兵には人間の仲間もいる。いや、私達と関わりがなくともイイ人だっていっぱいいるはずだ。個人の人格に関係なく人間全体を敵視する集団は怖い。
「ことはそうもいかん。今は時代がうねりを上げておる。万が一にも革命が成功すれば連中が国の主権を握ることになりかねん。協力しなかった儂等を爪はじきにしてな。失敗すればなお悪い、亜人が負け弾圧が強まる。平等な関係など更に遠のくじゃろう……」
ラビィルさんが俯く。難しい話のようだ。
「…………」
会議場に静寂がおりる。
「しっ」
パンっとヴィシャスが右拳を自分の左手に打ち付け笑う。
「簡単な話じゃねーか。要は連中に好き勝手させるのもまずい。亜人同盟が負けるのもまずいって話だろ」
一人一人の顔を見回す。……自信満々のようだけど、うーん、今の話をヴィシャスが理解できたか不安だ。
「ならオレらが亜人同盟のトップに立った上で勝っちまえばいい!」
勢いよく立ち上がる。
「オレが亜人同盟のトップになれば負けるはずがねぇ。更に!連中が弱者を虐げねぇようオレが見張って頭を押さえつけちまえばいいんだけの話だろ」
これで万事うまく収まるって寸法よ。と彼はそう言い切った。
「…………」
意外だ、できるかどうかはともかく筋は通っている。もっと馬鹿なことを言い出すこと思っていた。少し見くびりすぎていたようである。
ふと、ラビィルさんの方を見ると彼女はうんうんと頷いていた。どうやら彼女はあえて黙ってヴィシャスが答えを出すことを待っていたみたい。
「やりましょう!」
「ええ!俺達が世界を変えるんです!」
「さっすがアニキだ!」
幹部達も興奮して立ち上がる。すごい熱気。
私も何となく熱い気持ちになる。ヴィシャスがいつも自信満々に言い切る所は何故か胸を熱くし信じたい想いがこみ上げる。きっと皆同じなのだ。
パン、ラビィルさんが手を叩く。
「話は決まったようじゃな。我らは亜人同盟に加入する!そして組織の主導権を握るのじゃ!」
