「え!?ええっ」
 驚いた。全く気付いていなかった。

「あっしは隠形が得意なもんで、騎士の目を掻い潜ってあっしはあっしで鉱山に入ってたんでさぁ。んでアニキ達を見つけてついてたんですよ」

「い、いつから!?」

「昼には既に」

「…………」
 そんな前から……。

「何だ知らなかったのかよ、オレぁてっきり騎士に悟られないようわざとガルフを無視してるのかと」
 
 知ってたら口に出して言ってよ。目線で文句を言う。
「う゛、んな怒ることじゃねーじゃん」

 まったく、もう。
「ガルフも……いるなら声をかけてよ」

「あはは、いやぁ…その、邪魔しちゃ悪いかと。いい雰囲気かと思ったもんで」

「おっと」
 ガルフが私達の繋がった手を見ていた。

「っ!?」
 慌てて手を離す。人に見られてるとは思ってもいなかった。

「…………カカッ」
「…………」
 私だけかと思ったら、ヴィシャスも少し照れていた。

「ごほん、……それで……話はわかってるのよね」
 気まずさを誤魔化すために話を変える。

「えぇ、この先に捕縛された連絡員がいるんでしょう。話は聞いてやす」
「盗み聞きでね」
「そんな怒らないでくださいよー姐さん」
 ガルフは平謝り。そんなに謝られてはこちらが悪者だ、あまり怒るのも大人げない。

「いいから行きましょう。連絡員を助けたら……すぐ傭兵団の元に戻って援軍を……」
 そう言おうとした時だった。

「そこまでであーーる!!賊共めが!」
 荒々しい声がかけられた。

 っ、この声は!?

「ほははははっ!尻尾を出しおったなぁ!傭兵団の諸君んんんん!出会った時から怪しいと睨んでおったのだぁ!泳がせておけばまんまとひっかかりおってバーカめぇ!」

 見上げると、上部の坑道でブグラーが大槌を振り回し哄笑している。周囲には自分の取り巻きの騎士を控えさせていた。
 下から見上げ、向かい合い対峙する形になる。

「悪党めぇ!ここが年貢の納め時であーる!」
「否定はしねぇが、お前らには言われたくねぇなあああ!!」
 ヴィシャスは太刀の柄を掴んでいつでも引き抜ける戦闘態勢を整えている。

「天誅!者どもかかれぇぇぇぇ!」
「はっ直ちに」
 上司の指示に従って配下の騎士達が上の坑道から次々と飛び降りてくる。数十名――いいえ、もっと? 上部の坑道から次々と飛び降りてくる彼らの姿は、まるで蟻の群れのようだ。

「カカッ!はっはっはっは!!イキがいい雑魚共が!ウォーミングアップに使ってやるぜぇ!ヴェルゼ、下がってなぁぁぁ!」

「ヴィシャス! 気をつけて!」
 私は邪魔にならないよう後ろに下がった。
 お願い、彼が大ケガをしませんように。そう頼りになる背中に祈りながら。