「ねえ…いつになったら到着するの」
私は歩きながらヴィシャスに尋ねた。
「んーあと2、3日はかかるな」
歩きながら視線をこちらによこして彼が答える。
私達はアジトから遠く離れた場所にある鉱山町を目指している短い旅の途中だ。
「ガハハハッ姐さん、あっし達の依頼じゃこのくらいの遠出は珍しくないっすよ!」
一緒に来ていたガルフが補足してくれる。ラビィルさんやナイゼル、他の傭兵の人達は別の仕事で各地に散らばっているから今回は3人での行軍だった。アジトを出てからもう4日も経過しているけれど到着までまだ遠そうである。
山間から緑溢れる森を抜け、整備された道を進み、景色は赤茶けた荒野になっていた。
そう、私はヴィシャスについて傭兵団の仕事を見学に来たのだ。
『ヌシさえ良ければ未来の夫の仕事でも見ていかんか?今回は鉱山町の連絡員との会合だけじゃからそう、危険はないはずじゃ。たぶん』
と言われたからだ。別に未来の夫ではないし私は傭兵でもないけれど、せっかく外の世界に出たのである。色々と経験してみたいとも思ったので散々悩んだ末に同行することに決めた。
「それで、何の話し合い?」
「定期的に行っている情報共有でさぁ。鉱山町だけでなく各地の亜人種と連絡を取り合っているんですよ姐さん」
ガルフが教えてくれる。前から勘弁してくれと言っているが姐さん呼びは辞めてくれないから諦めた。
彼は獣人であるが故に全身に毛が生えているが抱きしめるとふわふわな毛のラビィルさんと針金みたいな毛並みでゴワゴワしている。前に興味本位で触らせてもらったが相当な硬度があるようだった。
傭兵に向いている体毛である。彼は最もヴィシャスと行動することが多い右腕でもあると人伝に聞いていた。
「ふぅん…」
重い荷物は男性2人が持ってくれており、手持ち無沙汰な私は腰のベルトからぶら下げている本を触る。
「魔法の本、貸してもらったんだな」
整備を終えたヴィシャスが鞘に刀を納めながらこちらを見ていた。
「えぇ…道中、暇だったら勉強に使えって…」
ラビィルさんに貸してもらった魔法の教本だ。内容は既に頭に入っているけど道中、復習するために持参している。お守り代わりでもあった。
「頑張ってんだな」
「うん…まぁね…基本的な治癒魔法は使えるようになったわ」
たぶんお世辞も入っているだろうけど、ラビィルさんからは治癒者と名乗れる最低限のレベルだと保証されていた。褒められたり他人に認められることは滅多にない経験だからとても嬉しい。
「すげーじゃねぇですかい。あっしもケガしたら治してもらおうかなぁ」
ガルフが期待の眼差しを向けてくる。そんなに期待されても困るんだけど。
「馬鹿、それ以前に傷を負わねーよう気をつけろよ」
「その点で言えばアニキはケガしそうにねーですから、残念ですねぇ」
「んだとぉ!」
2人はじゃれあっている。本当に仲が良さそうで兄弟みたいだった。きっと長い時を過ごして一緒に戦場をくぐり抜けてきた戦友でもあるのだろう。
「ヴェルゼも来いよ!」
「いや私は別に混ぜてほしいわけじゃ…」
眺めている私を何を勘違いしたのかヴィシャスが首に腕を回して巻き込んでくる。
私は歩きながらヴィシャスに尋ねた。
「んーあと2、3日はかかるな」
歩きながら視線をこちらによこして彼が答える。
私達はアジトから遠く離れた場所にある鉱山町を目指している短い旅の途中だ。
「ガハハハッ姐さん、あっし達の依頼じゃこのくらいの遠出は珍しくないっすよ!」
一緒に来ていたガルフが補足してくれる。ラビィルさんやナイゼル、他の傭兵の人達は別の仕事で各地に散らばっているから今回は3人での行軍だった。アジトを出てからもう4日も経過しているけれど到着までまだ遠そうである。
山間から緑溢れる森を抜け、整備された道を進み、景色は赤茶けた荒野になっていた。
そう、私はヴィシャスについて傭兵団の仕事を見学に来たのだ。
『ヌシさえ良ければ未来の夫の仕事でも見ていかんか?今回は鉱山町の連絡員との会合だけじゃからそう、危険はないはずじゃ。たぶん』
と言われたからだ。別に未来の夫ではないし私は傭兵でもないけれど、せっかく外の世界に出たのである。色々と経験してみたいとも思ったので散々悩んだ末に同行することに決めた。
「それで、何の話し合い?」
「定期的に行っている情報共有でさぁ。鉱山町だけでなく各地の亜人種と連絡を取り合っているんですよ姐さん」
ガルフが教えてくれる。前から勘弁してくれと言っているが姐さん呼びは辞めてくれないから諦めた。
彼は獣人であるが故に全身に毛が生えているが抱きしめるとふわふわな毛のラビィルさんと針金みたいな毛並みでゴワゴワしている。前に興味本位で触らせてもらったが相当な硬度があるようだった。
傭兵に向いている体毛である。彼は最もヴィシャスと行動することが多い右腕でもあると人伝に聞いていた。
「ふぅん…」
重い荷物は男性2人が持ってくれており、手持ち無沙汰な私は腰のベルトからぶら下げている本を触る。
「魔法の本、貸してもらったんだな」
整備を終えたヴィシャスが鞘に刀を納めながらこちらを見ていた。
「えぇ…道中、暇だったら勉強に使えって…」
ラビィルさんに貸してもらった魔法の教本だ。内容は既に頭に入っているけど道中、復習するために持参している。お守り代わりでもあった。
「頑張ってんだな」
「うん…まぁね…基本的な治癒魔法は使えるようになったわ」
たぶんお世辞も入っているだろうけど、ラビィルさんからは治癒者と名乗れる最低限のレベルだと保証されていた。褒められたり他人に認められることは滅多にない経験だからとても嬉しい。
「すげーじゃねぇですかい。あっしもケガしたら治してもらおうかなぁ」
ガルフが期待の眼差しを向けてくる。そんなに期待されても困るんだけど。
「馬鹿、それ以前に傷を負わねーよう気をつけろよ」
「その点で言えばアニキはケガしそうにねーですから、残念ですねぇ」
「んだとぉ!」
2人はじゃれあっている。本当に仲が良さそうで兄弟みたいだった。きっと長い時を過ごして一緒に戦場をくぐり抜けてきた戦友でもあるのだろう。
「ヴェルゼも来いよ!」
「いや私は別に混ぜてほしいわけじゃ…」
眺めている私を何を勘違いしたのかヴィシャスが首に腕を回して巻き込んでくる。
