望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

「いえ。おそらくは御者を直前で入れ替えたのかと。走る馬車の中ではシャーロット様を確実にお守りしながら撃退することは難しいと判断し、いち早く離脱を計りました」

「……敵の予想は」

「『王家の影』あるいは、それに相当する能力の高い集団かと、正確な数は把握出来ませんでしたが、馬車間近には何人かの気配がしました」

「『王家の影』がシャーロットを狙う理由は、何か考えられるか」

 そこで、これまでは淀みなくハビエル様からの質問に答えていたロイクさんは、数秒考え込むようにしてから答えた。

「おそらくは、ハビエル様の縁談相手を邪魔に思う何者かが、『王家の影』を使える者に居るのかもしれません」

 えっ……ロイクさん。そんな事を言ってしまっても大丈夫なの? だって、騎士団を、即日解雇になってしまうかもしれないのに……。

 彼はハビエル様からの職務上の質問に答えているから、大丈夫なのかな……これまでの数々の恐ろしい話を聞いているから、なんだかハラハラしちゃう。