望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 ヒッ……! そうなんだ! マチルダ様の持つ権力恐るべし!

 私はつい先ほど彼女と対抗しようと思った固い決意が、グラグラと揺らぐのを感じた。ままま、待って。あっ……あまりにも、形振りを構ってなくないかしら?

 いえ。ハビエル様が好きで居てくれるし、私も彼が好きならどんな障害があっても大丈夫! ……なはず。きっと。

「団長は上司として人としては優秀で素晴らしい方なのですが、そういう訳で周囲の全員は我が身可愛さに素知らぬ振りをして、口をつぐんでいます。まあ、実際のところ団長がマチルダ様に目を留められて恋愛関係に落ちていただければ、全員が幸せになりますし……僕も正直言えば、そうなれば全部丸く収まるのにと思っておりました」

 確かにそれは……そうかもしれない。

 そして、マチルダ様だって、それを望んでこういう状況を作っているのだ……自分以外の女性関係が上手く行かなかったハビエル様が、自分だけを見てくれることを。