望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 見た目だけで好かれる要素があり過ぎるのに、この人が女性に好かれていないって思い込んでいるの、本当に罪作り過ぎるわ。

 本当に……優しい。きゅんとしちゃう。もし、命の危険がなかったら、もっと最高な気分なのに……。

 ハビエル様の執務室は訓練場から、それほど遠くない位置にあった。頻繁に行き来することになる騎士団長の執務室は、近い方が良いわよね……なんて、とんでもなく素敵な人の隣を歩きながら、余計なことを考えていたりした。

 仕方ないのよ! 意識を四方八方に飛ばしていないと、ハビエル様の魅力を全身に浴びたりしたら、心拍異常や呼吸困難など、私の身体はそれこそとんでもないことになってしまう。

 ハビエル様の立派な執務室には、当たり前のように立派な応接セット。紺色の艶々とした生地には、高級感と落ち着いた上品さ。私は促されてソファに座ると、ハビエル様は当然のように隣に座った。

 ……あ。そうだった。アヴェルラーク伯爵邸で、言っていましたね。私は自分の隣に座るはずだろうと……。

「ここで……手紙を読んでも?」