望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

「どうして? と言われても……この子は俺と結婚すると言っただろう。部下には、もしシャーロットが城に入ったら連絡をするようにと伝えておいたので、何処に行ったのか探していたんだ。俺に会いに来てくれたんだろう? シャーロット。喉の調子はどうだ? 後で、喉に良い飴を届けさせようと思っていたんだが」

 近い~! 近い。近い。ハビエル様。距離がおかしいです~! そして、動いて汗かいているはずなのに、良い匂いするよ~!

 恥ずかしくなった私はなるべく遠ざかろうとするのだけれど、ハビエル様がその分近付いて来るという追いかけっこみたいなことを何度か続けた結果、マチルダ様が雷にいきなり撃たれたかのような衝撃でも受けた顔をして、くるりと振り返りふらふらと歩いて行った。

 彼女の後を何も言わずに従う、侍女や護衛騎士たち……とても訓練されている。

 ショックを受けている……それは、そうよね……大好きなハビエル様が、別の女を追い掛けているところなんて、絶対に見たくないですよね。

 それはそうと、マチルダ様の登場に驚き過ぎて、ここに来た理由を忘れかけているところだった。