望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 ええ。その通りよ。満足に話せない相手と意思疎通をするなんて、早々に諦めてしまう人がほとんどよね。

 とは言え……イザベラには、私を傷つける気なんて、全くないことはわかっていた。

 異性と満足に会話が出来ないことで考えうる事実をそのまま伝えることが、こんなにも相手にショックを与えるなんて、彼女は思ってもいないだろう。

 私が一番にこの先の未来を心配しているのよ!

 このまま、誰とも上手く行かず、求婚者も現れず……ただ三年の月日が経って売れ残りの行かず後家と言われたら……どうしよう!

 爵位付きの貴族令嬢である私には、お母様の元部下のように、自ら働いて生きていくという選択肢だってない。

 一人娘の私はアヴェルラーク伯爵家を存続させるためには、無理矢理にだとしても貴族の血を引く良き伴侶を得るしかないのだ。

 デビューして三年の間に求婚者がまったく現れなければ……貴族の役目として、それが、父ほどの年齢の男性でも、求婚されれば断れなくなってしまう……それだけは、絶対に嫌!

 何も考えずに、ただ普通に話せば良いということは、もちろんわかっている。