唯一阻む難関は、彼にご執心な王族、マチルダ姫様……彼女は周囲を圧するような金髪縦ロールで、あの気の強そうな青い目に睨まれた私は、蛇に睨まれた蛙になるしかない。

「……はーっ……もし、私が城の近くの湖に浮かんでいたら、助けに来てね。エリアス」

 ぷかぷかと湖中央へ浮かぶ私。容易にそんな光景が浮かび、私はなんだか泣きたくなってしまった。

「いやいや、その場合は、色々と手遅れだろう。何を言ってるんだ。シャーロットは」

 呆れたように言ったエリアスに、私ははあっと大きくため息をついた。

 彼の言っていた通り、ハビエル様が特上の男性だということは、私だって理解出来る。けれど、私だってこの年齢になるまで、身の程を知り生きて来たのだ。容姿も金髪青目で良く居る色合いで、口下手で機転の利いた会話なんて出来るはずもない。

 ああいった……皆が憧れる目立つような男性とは、これからもまるで縁がないと思って居たし、今でも求婚されたことを現実とは思えない。

「それにしても、どうして、こんなことになってしまったのかしら……ハビエル様は、私の名前も知らずに王族たちの前で、結婚宣言したのよ」