「……はー……笑いすぎて、お腹痛い。というか、これまでに受け取っているクラレットからの何通かの手紙も、挨拶の日取りを決めたいという話なんじゃないか? さっさと返事した方が良くないか?」

 他人事だとはわかっているけれど、命の危険がある従姉妹に対して、あまりにも情がない。

 私が軽く睨み付ければ、エリアスはにやにやとやたらと嬉しそうに微笑んだ。

 エリアスはベッド脇チェストの上に置かれた、何通かの手紙を指さした。私はその中の一通を、手に取った。

 気が利くエリアスから小さなペーパーナイフを受け取り、便箋を開けると手紙の中身を読んだ。

「あ……私からの返事がないから、心配していらっしゃるわ……今日の午後までに返事がなかったら、無作法を承知で、直接訪ねてみると……訪ねてみるようにしたいですって!?」

 手紙の内容を確認していた私は慌てて、ベッドから立ち上がった。早く返事を書かなければ、あのハビエル・クラレットが、このアヴェルラーク伯爵邸に直接訪ねて来てしまう!

 それは絶対に、避けたいわ!

「はいはい。シャーロット。さっさとお返事返した方が良いよ……そりゃ、そうだろう。求婚されて承諾した女性なら、手紙が来ると同時に返事を出しているだろう」

 慌てて私が机に座ったら、エリアスが手元を覗き込んで来た。

「もう……エリアス、のぞき見しないでよ! これって、他の人への手紙よ」

「シャーロットもこうやって文字で書く手紙なら、自分の意志をどもらずに出せるのにな……今度、ハビエル・クラレットと話す時は、筆談でもしてみたら?」