望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 そして、私たち社交界デビューすぐの子は、知らなかった……そういう、暗黙の了解のような……。

「……? シャーロット。何を言ってるんだ。だが、クラレットがシャーロットに求婚したということだろう? 一昨日は、僕も仕事があったから出られなかったが、一体、何があったんだ。夜会に出た最初から、話してくれないか。君本人以外から話を聞いても、一向に要領を得ないんだが」

 エリアスは困った表情を浮かべていた。彼も私の母に頼まれて、ここに来たのかもしれない。

 ……そうよね。

 私本人だって、意味がわかっていないのよ。あの夜のこと。

「その……イザベラと、話していたの。男性と話すことは苦手だって。ここから関係を進めようとしたら、それだけで緊張してしまうって。そうしたら、クラレット団長なら社交界デビューすぐの私なんて、絶対に相手にしないだろうから、石像だと思って会話の練習相手にしたら? って」

「……まあ、確かに一理ある話だな。それから?」

 エリアスは色々と言いたいことを飲み込むような仕草をすると、話の先を促した。