望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 え。待って……待って。私……ハビエル様と、このまま結婚するの?

 信じられない。ただ異性との会話の練習を、しようと思っただけなのよ。

 ハビエル様はとある部屋へと入ると、驚き過ぎて何も言えなくなっている私を椅子に座らせて、何故かベッドの上にあった毛布を持って窓から出た。

 ……え? 何しています? なんで、窓から出たの? っていうか、私ここから何をしたら良いですか?

 もう、何がなんだかわからなくて、全く現実味がないんですけど……?

 というか、なんだか、廊下を歩いていた時、一夜を共にすると勘違いしているなら、舌を噛むしかないと思い込んでいた私がとても恥ずかしい。

 ……真面目そうなハビエル様は、きっとそういうことをするなら、結婚する流れでないと考えてくれるとても誠実な男性なのに。

 けど、結婚する前に私……マチルダ様に、狙われて暗殺されない? 城の近くにある湖に浮かばない?

 もしかして、皆は王家の末姫の勘気にふれるのを恐れて、ハビエル様には「あの人には近付かない方が、身のためよね」みたいな、そんなふわっとした噂がまことしやかに流れていたってこと?