「まぁ……ハビエル。貴方ったら、もう結婚しないと言っていたのではないの?」

「非常に珍しく女性の方から、俺に声を掛けてくれた。彼女にする……いいや、俺が彼女と結婚したいんだ」

 ……え?

「なっ……何を言っているの! ハビエルお兄様。嘘でしょう」

「待て待て。ハビエル……話が早急過ぎるではないか」

 困り顔の陛下は、甥の結婚宣言を止めるように右手を挙げていた。

 そうですよね! 当事者である、私もそう思います!

「伯父上……いいえ。待てません。俺はこれまで、一切女性から声を掛けられたこともなく、身分に釣り合うご令嬢に縁談を持ち掛けても、すべて断られるばかり……この令嬢を逃せば、一生結婚することが出来ません」

「……ハビエルお兄様?!」

 悲鳴のような声で彼を呼び、憎悪の目付きを私へと向ける末姫マチルダ様……なっ……何となく、私、ハビエル様が遠巻きにされて「きっと、私たちなんて相手にされず、王家か公爵令嬢と結婚するでしょう」と、皆からひそひそと噂されていた理由……これで、わかってしまった!