望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 とは言っても、私はたっぷりと布を使った豪華なドレスを着用していたし、身軽な格好をした彼らと同等な動きが出来る訳がない。

 それに、色々あった後に完全に油断してしまっていた自分にも、なんだか腹が立った。

 私の命を狙うほどに、激しい感情を持つマチルダ様は、この国には居ないはずだ。彼女の『王家の影』は、異国へと行ってしまっているはずだ。

 私を襲うような理由もなくなってしまっているし、もう既に危険は去ったと思い込んでいた。

 けれど、現に私は白昼堂々とお城の中に、何者かに襲われている……!

 身を伏せた瞬間に剣を一本奪えたことは、本当に偶然な幸運だった。これが出来なければ、すぐに切り伏せられていたかもしれない。

 どうしよう……どうする? 私が少々剣を使えたところで、多勢に無勢になってしまう。

 それに、彼らは一体誰なのだろう。私が命を狙われる理由なんて……あまり、思いつかない。