望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

「大丈夫だ。今ああして俺と話せたということは、いつかは話せるということだ。ごめん……何か勘違いさせたかもしれないが、シャーロットの力を疑っている訳でない。ただ、心配なんだ。怪我をしないか……俺のせいで、理不尽な目に遭ってしまわないか」

 ……ハビエル様。自分こそが、とんでもなく理不尽な目に遭っていると言うのに……本当に優しすぎる。

『絶対、勝ちます』

 私は石板にそう書いた。そして、自分にも勝利を誓った。

 ハビエル様とマチルダ様の二人に関しては、周囲だってどう働きかけて良いかわからない、延々とどうにもならない膠着状態だったのだ。

 そこをなんとか出来るのは、おそらくは……ハビエル様と結婚すると決意した私だけ。


◇◆◇


 そして、彼との打ち合わせを終えて、数日後……マチルダ様と私の勝負の日。

 本来は王族たちが使用する訓練場にて、女性用の乗馬服のような軽装で、私たち二人は対峙していた。

 マチルダ様は王族としての護身術で、剣を扱うことも出来るらしい。当然のことだけれど、御身に万が一があってはならないと、私たち二人は木剣での勝負となった。