望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 大丈夫だと何度も伝えているのに、何度も心配を止めないハビエル様についムッとしてしまった私は口を開いた。

「これは、私とマチルダ姫との問題で、ハビエル様には関係ないのでこれ以上は何も言わないでいてください!」

「え……あ、はい。シャーロット……あの」

 滑らかに出て来た言葉にハビエル様は非常に驚いた表情を浮かべ、初めて彼相手に噛まずに話すことの出来た私だって口を両手に手を当てた。

 ……そうよ。今、私……ハビエル様にはっきりと言葉を出せたわ。

「ハビエル様……っ……(私、今話せました)っ……あのっ……」

 けれど、続いて話そうとすると、やっぱりダメだった。何も考えずに感情のままに言えば良いのかもしれないけれど……やはり、意識した『普通』は、『普通』ではないのだった。

 再現性のない成功だったとしゅんとした私に、苦笑したハビエル様は近づいて頭を撫でた。