幼い頃から従兄弟エリアスと共に、母や母の部下だった元女騎士たちに剣術や体術などは叩き込まれた。

 エリアスが『私の事を弟だと思っていた』と以前に口にしていたのは、無理もない事なのだ。

 ……実際のところ、私が異性にのみ『口下手』になってしまうのは、体格に恵まれた男性にも勝たなければならないと、彼らに長い間闘志を燃やしていたからだと思う。

 だけど、アヴェルラーク伯爵家の後継娘として、彼らから好かれて求婚されなければならないと、逆方向へと努力することになり、以前の意識があって余計な力が入ってしまう。

 幼い頃は、男勝りな性格で……けれど、令嬢らしく女性らしくしなければと自らに強制的に思うことで、異性に対して口下手になってしまった。

 そういう流れで異性のみに口下手になる原因は、明確にわかっているものの、長年培った思い込みは、なかなか取り除けるものではなかった。

「……だが、俺は心配だ。シャーロットが怪我をしてしまわないか、それに、マチルダが妙なことを言い出さないか心配なんだ」