全然普通になんて話せていないし、なんだったら、「何者だ」と言わんばりに警戒心を含んだ鋭い視線で見つめられ、今すぐに彼の見える範囲から逃げ出したいけど、まるで縫い止められたように足も動かないし……!

「ああ。君は、見るからに……デビューしたての、夜会に慣れていない貴族令嬢だな。今夜は初めての夜会か? 見ての通り、俺はここで護衛任務中だ……もしかして、何かあって帰りたいのか? 不審者でも居たとか?」

 響きの良い低い声で流れるように問いかけられて、私は軽く混乱した。

 え? 今、何個か疑問が入ってたよね? 何から、答えたら良いの?!

「こっ、今夜は……(私はデビューして三回目の夜会で)……(まだ、夜会から)帰りたくっ……ないです」

「……え?」

 ぽかんとした顔のハビエル様を見て、私は彼にとんでもないことを言ってしまったのではないかと悟った。

 言いたいことは部分的には確かに言えたんだけど、それを繋げれば?

「あっあのっ……(これは、違うんです。変なこと言って)ごめんなさい……」

 待って……待って、違うんです。そういうつもりではなくて……。