望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから

 死の覚悟を決めた兵士が恐怖を克服し何より強いように、私はハビエル様と結ばれるために、この人に嫌われてても良いと決意した。

 だから、これを言って命を狙われたとしても、それはそれで、私の意志通りのことだった。

「ええ。マチルダ様。これ以上、私とハビエル様の仲を邪魔することを止めてください。何か文句があるのなら、ハビエル様へ直接仰ってください」

 それは、決して出来ないとは思うけど。

「なっ……な! 何を言っているの! アヴェルラーク伯爵令嬢、貴女……自分が口にしている事の意味を理解しているの?」

 これまで自分の意志を忖度してくれる人ばかりを相手してくれていたせいか、私がはっきりと言い返したことにマチルダ様は激しく動揺しているようだった。

「はい。私はハビエル様と近く婚約へと進みますし、そのまま結婚する予定です。マチルダ様はその事について、何かご意見があられますか?」

「……貴女のような、何も持たない伯爵令嬢よりも相応しい方が、ハビエルお兄様にはいくらでもいらっしゃるわ……自分からそれを察して、身を引くべきでしょう!」